SNHの活動紹介② 標本を活かす
2023/3/7 10:15

SNHが行う調査では,筋肉や脂皮(しひ,皮下脂肪のついた皮),内臓,骨格などの標本を採材します。それぞれの標本がどのように使われているのか,ご紹介します。
まず,筋肉からは,DNAを調べることができます。
DNAは鯨類のそれぞれの種に固有の特徴をもつので,たとえ腐ってしまって外形から種判別ができない場合でも,DNA判定により種判別を行うことができます。
脂皮は色々な研究の対象になっていますが,鯨類が体内に汚染物質を蓄積していないかどうかを調べる研究によく使われます。ダイオキシンやポリ塩化ビフェニル(PCBs)など一部の汚染物質は脂に溶けやすいため,厚い脂皮をもつ鯨類の体に蓄積されやすいという特徴があります。体内の汚染物質濃度が高くなると,繁殖率や免疫の低下につながる可能性があります。
内臓からは,いろいろなことがわかります。気管から細かい泡が出てくれば,その個体は溺れて死んでしまったことを意味します。胃の内容物からは,食べていた生物の種類を知ることができます。生殖腺や乳腺を見れば,その個体が性成熟していたかどうかを推測することができます。内臓が新鮮であれば,ホルマリン液に浸けて固定し,内臓が病気にかかっているかどうかを調べることもできます。
2022年11月10日時点で,SNHの標本を使って発表された学術論文は42本,博士の学位論文は6本,学会発表は117題あります。SNHの標本が,日本における鯨類研究と次世代の研究者育成に役立っているのです。
← 活動報告一覧へ戻る