シリア北西部:大地震に対する緊急人道支援報告(3)
2023/4/9 15:23
【大地震から二カ月】
2023年2月6日未明に発生したトルコ・シリア大地震から2カ月が経過し、シリアにおける甚大な被害の全容が明らかになってきました。シリア人権ネットワークによると、今回の大震災のシリア人の死者数は10024人と報告されており、うち5439人がトルコ在住のシリア人避難民、4191人が非政権支配地域在住、394人が政権支配地域在住とされています。こちらのデータを見ても分かる通り、シリア非政権支配地域における死者数が最も多く、その被害の大きさが見て取れます。非政権支配地域で多くの犠牲者が発生した原因として、震源に近かったことはもちろんですが、国連・国際社会による支援の大幅な遅延が影響したことが理由の一つとして報告されています。
2月23日に開催した「SSJ大地震緊急セミナー」ではSSJ現地スタッフのスラージュが登壇し、地震発生当時の様子を語りました。彼はそこで、「地震発生から三日間は一切支援が入ってこなかった。」「瓦礫をボランティアたちの手によって直接どかしていかなければならず、重機があれば助かった命が助からなかった。」「国際社会から見捨てられたように感じる、今回の地震の犠牲者は国際政治によるの犠牲者だ。」と言葉を紡ぎました。改めて私たちSSJはこのような非政権支配地域のシリア人の方々がおかれる状況を伝え、支援を続けていく必要があると感じました。
今回は、最近スタートした地震の被害を受けた住居の再建支援の様子について、そして震災発生直後から続けている緊急人道支援(食料支援)について焦点を当てて報告させて頂きます。
【住居再建支援】
地震から2カ月が経過し、少しずつ緊急の支援から人々が立ち直っていくための支援にシフトしていく一環として、大地震により倒壊被害にあった家庭のうち、特に貧困家庭に対しての家屋再建支援をスタートさせました。瓦礫撤去、修復・補正、家具の搬入、そして専門家による安全確認までをしっかりと行っていき、まずは写真が示すような二世帯分の家屋を再建させることができました。
この家屋には二世帯(6人•3人家族)が暮らしていたのですが、大黒柱であるお兄さんがシリア危機下で亡くなっているなど、経済的に自力の再建が出来ない状況にありました。しかしSSJの支援により避難先での生活を漸く終え、自らの家で暮らすことが出来ています。SSJは現場のニーズに合わせて小回りが効くからこそ、引き続き困窮家庭の家屋再建支援を続けていきます。
↑再建作業の様子。©︎Stand with Syria Japan
↑耐震構造の確認。©︎Stand with Syria Japan
作業の仕上げ。©︎Stand with Syria Japan
二世帯分家屋の再建を完了。©︎Stand with Syria Japan
【食料支援(ラマダン)】
ムスリムの方々にはラマダンの時期になると、日中の断食を終え、日が沈んでから皆で集まって食事をするイフタールという慣習があります。今回、大地震により、家と生計手段を失った人たちにイフタール用のいつもより少し豪華な食事の配給を行いました。ムスリムの方々にとってラマダンは自分を律し、貧しい人々や弱者に対して思いをはせ、神や平和のための祈りをささげる非常に重要な慣習です。現地の方々の文化を尊重する形での支援を届けることは、SSJが非常に大切にしていることであり、彼らの尊厳を守ることに繋がります。
食料準備の様子。©︎Stand with Syria Japan
食料配布の様子。©︎Stand with Syria Japan
食料配布の様子。©︎Stand with Syria Japan
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