リトマスメンバーの想い①~大谷編集長~
2023/1/24 12:37
皆さんこんにちは。リトマス編集長の大谷です。今日は私がファクトチェックという活動をするようになったきっかけの話をしたいと思います。
私にとっての大きな転機は、2011年3月11日の東日本大震災でした。当時私は関東にいて、自分自身が直接的な被害を受けることは幸いにしてありませんでした。しかし、地震と津波、そして原子力災害という三重の危機にさらされた日本は、被災地外も含め国中が激しい混乱に陥りました。
特に、これまで身近でなかった原子力や放射能の専門的な話題が日常に入りこみ、人々は大きな不安を抱えることになりました。政府、マスコミ、著名人、口コミ、インターネット…あらゆる情報源の何を信じるべきなのか、当時を生きた人は誰もが戸惑った記憶があることでしょう。
この頃の私はたまたま時間に余裕があり、一日中ネットに張り付くような生活をしていました。報道で日夜伝えられる被災地の惨状は言うまでもないことですが、目の前のオンライン空間の混沌も極まっていました。既にどこかで否定されたような情報も、別の場所で繰り返し流れてきます。私のように四六時中ネットを見てあちこちで情報収集をしている時間のある人間は少ないので、各人の知っている情報に差が生まれるのは無理からぬことかもしれません。
世の中が大変なことになっているのに、自分は何もしなくて良いのか。余っているこの時間を使って何かするべきではないのか。そんな風に思って、「東北関東大震災に関するデマまとめ(@jishin_dema)」という名前のアカウントをTwitterで立ち上げたのは3月14日のことです。
当時の私の検証活動は今思えば随分荒削りなもので、できるだけ客観的な証拠を基に事実を判断しようとはしていたものの、結局は自分の印象で白黒を決めるようなこともありました。後から自分自身の発信の間違いに気付き、訂正したことも何度かあります。試行錯誤を重ね、徐々に経験を積みながらの拙いやり方でしたが、たくさんの人に支持され、必要な仕事と認めていただけました。当時のことは荻上チキさんの著書(*1)やインタビュー(*2)で取り上げていただいています。
あれから既に12年近くが経ちました。アカウント名を「ネット上の情報検証まとめ(*3)」と変え、災害に限らずあらゆる情報を対象に、私は今も検証活動を続けています。逆に言えば、真偽ないまぜの情報が社会を混乱させるという問題は、今も解決されないままなのです。
2022年1月の「リトマス」の発足は、この巨大な問題に立ち向かうための新たな一手でした。一過性の短文のツイートより、ファクトチェック記事という後に残る形で検証の成果を提示した方が、その意義は大きいはずです。しかし、手間や時間はずっと多くかかります。2011年のあの時と同じく、最初は様々な模索が続きました。丸1年が経った今でも足りないことはまだまだあります。多くの方の協力を得られるよう、一層の努力を続けていこうと思います。
私の活動の原点である東北の被災地には、今でも観光やボランティア活動で時々訪れています。被災地の一日も早い復興と繁栄を願っています。
左上:石ノ森萬画館と石巻ハリストス正教会(宮城県石巻市、2022年)
右上:東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町、2023年)
左下:小槌神社での虎舞披露(岩手県大槌町、2022年)
右下:ミッフィーカフェかまいし(岩手県釜石市、2022年)
*1 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334036218
*2 https://book.impress.co.jp/books/3114
*3 https://twitter.com/jishin_dema
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