現地パートナーがお答えします!【シリア人という理由で虐められたりすることはあるのでしょうか?】
2021/6/25 11:41
本日もPiece of Syria トルコ事業説明会「どこからも支援が届かない場所に教育を」でいただいた、【トルコの補習校について】の質問にお答えします!
【回答者】
・ウサマ:トルコの補習校支援をしているNGO教育プロジェクトマネージャー
・中野:Piece of Syria代表。トルコにてシリア難民支援に専門家として活動した他、難民となったシリアの人たちを訪ねて、中東・欧州10カ国6ヶ月を周遊。
・濵田:Piece of Syria学生スタッフ。大阪大学外国語学部トルコ語専攻卒業。現在は同大学大学院人間科学研究科所属。2018年9月から2019年6月までトルコのイスタンブールに留学。卒論はトルコ、イスタンブールにおけるシリア難民支援について執筆。
【Q】シリア人という理由で虐められたりすることはあるのでしょうか?
【ウサマ】あらゆる場所で言えることですが、異なる文化がある場所では差別の問題が生まれます。特に子ども達同士では、どうやって解決すればいいかが分かりませんから。
こうした子ども達の問題の原因の一つが、残念ながら一部のトルコの母親によるものです。自分の子どもに「シリアの子どもと仲良くしちゃダメよ。一緒に遊ばないようにね」と教えたりするのです。もちろん、全てのトルコ人の母親がそういうわけではなく、一部です。
この状況に対して、私自身、怒りを覚えています。なので、なんとかしなければいけない、と強く思って沢山のアクティビティを実施しています。改善はしていますが、全ての問題が取り除けているわけではないのが現状です。結果、シリアの子どもが学校に行くと怒って帰ってくることがあります。「トルコ人のクラスメートが、僕とは遊んでくれないんだ。ひとりぼっちなんだ。休み時間になっても、教室のすみでじっとして、休み時間が終わるまで待ってる」と。それを聞いて私は本当にショックで、怒りを覚えています。
補習校はこうした問題の解決のために、役割を果たしていると言えます。
【Q】平和教育や差別などを減らすような教育について、何か参考に取り入れたり、モデルにしている手法は、ありますか?
【ウサマ】シリアの子どもとトルコの子どもが同じ場所で遊び、兄弟のような関係を作っています。彼らはまずお互いを受け入れるところから始めます。サッカーチームやスイミングスクールなど、同じ場所でのアクティビティを通してシリアの子ども達が遊び合い、学び合い高め合う中でお互いの理解を深め合っています。トルコの子ども達には、「シリアの子ども達は何も悪くないし、君達と同じなんだ。君達は兄弟なんだから、一緒に強くなろうね」と説明しています。そして、この活動は少しずつ成果を上げています。
【Q】シリアの戦争は、子ども達のメンタルヘルスや成長に影響はありましたか?
【ウサマ】戦争の影響は、子ども達だけでなく、大人にとっても大きいです。それが戦争です。
私たちのセンターでも心理社会的ケアを実施しています。例えば、アクティビティを通して、悲しい出来事が忘れられるような時間を作ることです。爆発音が聞こえた時に「あれは何?」と子ども達に尋ねられた時、「あれはただのゲームの音だよ」と言ったりします。ですが、潜在的に爆発音が刷り込まれているものもあり、夜中に急に飛び起きて怯えたりすることもあります。
メンタルヘルスやトラウマの問題は、子ども達だけでなく、大人達にも言えることです。それは私も含めて。
補習校は大切な役割があります。ここは安全な場所なんだと知り、友達と過ごし、おいしいものを食べ、悲しい出来事を忘れられる「心の治療ができる」場所です。
【Q】補習校で行われる社会的心理ケアについて、精神科医や臨床心理士などの専門家は関わっていますか?
【ウサマ】心理社会的ケアを行なえるのは、研修を受けたプロの方だけです。残念ながら、常勤の心理カウンセラーを雇うことはできていません(彼らの給料は高いので...。)が、毎月、プロのカウンセラーに来てもらって、監修していただいています。
【Q】シリアの子ども達はシリアの歴史を学ぶことができていますか?
【ウサマ】残念ながら、シリアの歴史を学ぶことはできていません。
シリアから避難したシリア人の大学生も、シリアの歴史を知らないでしょう。20歳前後なので、シリアから逃れたのは10年近く前で、彼らは当時、10歳頃でした。
ネットで調べて、というのも、大きくなればできますが、小学生くらいだと難しいので、補習校に通う年齢の子ども達はシリアの歴史について、ほぼ知らないです。
補習校では、それに善処できるよう、アクティビティの時間にシリアの歴史や地理を学べるような機会を作っています。母国の歴史や地理を知っておくことは、とても重要なのことですが、それができていないシリアの子ども達が多くいるのは、悲しいことです。
【Q】現在やっている教育事業が先(上級学校や職業)につながる道筋が、どの程度見えているのか、知りたいです。
【ウサマ】シリアでは、言語とコンピューターサイエンスが得意であれば職探しは難しくないです。卒業後は、トルコ語を話せるようになれば職探しは簡単です。もし言語が苦手だったら、職探しは難しいです。
【Q】2011年といえば今の生徒はトルコ生まれ?シリアに戻るというよりはトルコで暮していく子が多いのでしょうか?そのためにトルコで暮らしていくための補習校という理解よいのでしょうか?親御さんたちはシリアに戻りたいという気持ちはあるのでしょうか?
ウサマ】本音でお答えしますね。世界中の全ての人は母国以外の国で生活することを望まず、母国で生活したいのではないでしょうか?なので、もちろん帰りたいと考えています。
しかし、トルコに避難中のシリア人は、シリアの戦争が少なくともあと10年は収束することはないと見込んでおり、かつ戦争に伴うネガティブな影響があることも考えています。そのため、両親らは子ども達の未来を想い、引き続きトルコに滞在する方向性でいます。勿論、シリアがたとえ破壊されていても、本心では皆シリアに戻りたいとは思っていることは間違いありません。
【濵田】
2019年の調査では「シリアに帰りたい」というより「永久にトルコに留まりたい」という傾向が強まっています。その1つの理由としては内戦がいまだ続いているため。もう1つの理由は数年間とトルコで過ごしてきた中で作り上げてきた生活が普通になっていることが考えられています。
参考:「トルコ人とシリア人双方がもつ互いへの意識」に関するUNHCRの調査になります。
こちらの結果は英語版も公開されているので、ご興味ある方はご覧ください。
Erdoğan, M, M. Syrians Barometor 2019: A Framework for achieving social cohesion with Syrians in Turkey, UNHCR, (2020).
https://www.unhcr.org/tr/wp-content/uploads/sites/14/2020/09/SB2019-ENG-04092020.pdf
(要約版)
Syrians Barometor 2019: A Framework for achieving social cohesion with Syrians in Turkey Executive Summary https://www.unhcr.org/tr/wp-content/uploads/sites/14/2020/09/SB2019-SUMMARY-04092020.pdf
【中野】2017年はシリアの帰還意思が強かったのですが、2019年ではトルコに留まりたいという人が増えたそうです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takaokayutaka/20210319-00228183/
僕個人の経験からは、「人による」という要素が非常に大きいと感じています。
故郷の街の状況がどうであるか。故郷に家族は残っているのか。トルコで仕事ができているか。他の家族もシリアに残った家族を養っているのか、など。
また反政府を支持している人は、今のアサド政権である限りはシリアに戻りたくないと言いますし、アサド政権が支配している地域は治安が安定しているので帰りたいが「徴兵制がどうなるか」が鍵になる、と話していた人もいます。
ともあれ、帰国が難しいという状況の中で、トルコはシリア国内に軍事侵攻をし、シリア国内にトルコ領を作って、トルコに住んでいるシリア人が「帰国」できるように、と促しました。大学の分校や送金用の郵便局を作っていますが、帰還は進んでいません。
ここに載っている回答は全ての質問のうち一部のみです。
全ての回答を見たい方は、こちらもご覧ください!
https://docs.google.com/document/d/1_x1RRnEVNxoCgdQpgIqDqcZjYWIFXWqpgKpxKApShKc/edit
キャンペーンは明後日27日までとなります。
最後まで応援よろしくお願いいたします!!
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