【イベントレポート】今までのやり方が通用しない時代の「答えのない問い」の考え方
2021/6/19 13:17
こんにちは!Piece of Syria学生メンバーの清水拓人です。
6月5日伊藤剛様にご講演いただいた【今までのやり方が通用しない時代の「答えのない問い」の考え方】イベントについてレポートします!
「なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか―ピース・コミュニケーションという試み」の著者である伊藤剛様をお招きした本イベント。
戦闘と平和について考える際に、「悪 vs 正義」と二項対立で捉えるのではなく、多角的な視点を持って考え続けることが大切だと弊団体は考えています。
伊藤さんの著書に同様のことが書いてあり、是非お話いただきたい!とご連絡をさせていただき、今回のイベントにつながりました。
イベントの前半は、【なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか・平和のトレードオフとはなにか】について講義形式。そして、後半は【平和交渉人】と【戦災遺構】を例にあげて、答えのない問についてワーク形式で考えました。
【平和のイメージは共有できない】
「戦争は伝わりやすく、平和は伝わりにくい」ということを皆さんも体験してみていただきたい実験があります。
まず画像検索で「戦争」を検索してみてください。次に「平和」を検索。
すると、何か感じることはありますでしょうか?
戦争は具体的なもの、例えば、悲惨な戦場や兵士。
平和は、ピースマークなどの曖昧なシンボルしか出てきません。
僕もこの検索結果を見て、戦争の伝わりやすさ、形のない平和の伝わりにくさについて「なるほど」と感じました。
続いて是非考えていただきたい質問です。
「戦争はよくない。平和が大事」と言われたら、当然だと思いませんか?
しかし、現実はどうでしょう?
「戦争はダメで、平和がいい」と分かっていても、戦争は起こっています。
その時、「正義 vs 悪」の対立ではなく、「正義 vs 正義」なのかもしれない、という視点を持つことが大切なのではないでしょうか?
伊藤さんの問いかけを通じて、たくさんの視点を得ることができたのは、本当に貴重な体験でした。
【戦争を止めるためには、正義は犠牲になっても良いのか?】
答えのない問いが、現実世界では多く存在します。
後半は、そのような「答えのない問い」について、2回のディスカッションで考えます。
一つ目のワークショップでは、「もしあなたが平和交渉人だったら、正義か平和か、どちらを選びますか?」ということを考えました。
長い内戦で100万人以上を殺した反政府軍がいます。
戦争を終わらせるために、「今までの犯罪を罰しないこと」「新政府のえらい役職につけること」ということを認めるべきでしょうか?認めないと戦争は継続し、さらに死者は生まれてしまうかもしれません。
今回のイベントでは参加者の大半が、YESを選びました。
つまり、交渉の場を設け、戦争を止め、新たな犠牲者を出さないことを望んだ形です。
Noを選んだ方の意見は「要求をすんなりのんでしまっては根本的な解決にはならない。内戦が繰り返されてしまうのではないか」「最初から条件をのむと、相手に主導権を渡してしまうことになるのではないか」というもの。
もちろん、どちらが正解、ということではない「答えのない問い」です。
大切なのは、どちらを選んだかではなく「なぜそう思ったのか?」ということです。
各チームの発表の後に、伊藤さんが話されていた「争いの発端は一方が悪であったとしても、内戦中はお互いに傷つけあうことで、どちらも正義を主張する」という言葉がとても印象的でした。それを受けて僕は「反政府軍の要求をのむことも正義に反するが、反政府だけが一方的に正義に反しているとは言えないのではないか?」と感じました。正義という言葉を持ち出すことは難しいと思います。
ちなみに、これはシエラレオネで実際にあった例なので、現実ではどうだったのかについて気になる方は是非、調べてみてください。
【戦争の被害を感じる跡地は残すべきだろうか?】
戦争が終わり、広島の原爆ドームのような戦争の被害を受けた建物(戦争遺構)があった時、「まちの復興のために取り壊すべき」か、「戦争の被害を語るために残すべき」か、を市長の立場で考えてみましょう、というのが2つ目のワークショップ議論でした。
「取り壊すべき」という立場の方は、「被害者が何度もつらい記憶を思い出さないようになくすべき」であったり、「語り部や写真、VRなど建物以外でも戦災の歴史を語り継ぐことはできる」という建物を残す以外の方法の提案が出ました。
「残すべき」という立場の方からは、「歴史を風化させてはいけない、現物だからこそ伝えられるものがある」との意見でした。広島出身の方からは「原爆ドームを残したことで当時を知る人が日本が平和になったと実感することがある」という声も。
「戦災遺構を残すことが、加害国であるはずの日本に被害者感情を植え付けるのではないか」という意見には、はっとさせられました。
当時の被害者から見た場合と、僕のように後世の人から見た場合で、意見が変わるでしょう。皆さんはどう思われましたか?
【大切なのは考え続けること】
どちらのワークショップも、様々な意見が飛び交い、たいへん盛り上がりました!
今回のイベントのご参加者は、年代・地域・職種を幅広く、様々な立場の方で、活発に意見交換をすることができました。特に広島出身の方や元自衛官の方の意見は平和に携わるもの・関わるものとしての生の意見であり、大変貴重なものでした。
初めてPiece of Syriaのイベントに参加された方も多く、「平和」というテーマが沢山の方を惹きつけるテーマだと感じました。
答えのない問いを考え続けることは、難しく、時には苦しいものです。
ですが、社会はそんな問いで溢れています。白黒はっきりつけることなんてできない。二項対立ではない。それでも、どこかに妥協点を見つけないといけない。…物事を単純化して、思考を止めてしまいがちな私たちに、考え続けるきっかけをくれる、そんなイベントでした。
アンケートにも「ふだん話し合わない内容を話し合うことができて良かった」「意見交換ができて良かった」という感想が多くみられましたが、まさに参加してくださった皆さんと一緒に作ったイベントでした。ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
【戦争と平和の境界線は?】
まだ戦争が続く私たち活動地のシリアについて「シリアの戦争が早く終わってほしいと思っていますが、終わった後も教育の面や戦争記憶の面などで様々な課題があることに気づかされました」と言ったご感想もいただきました。
戦闘行為が終わったとしても、課題が残るのが現実です。
シリアが本当の意味で平和になるために、未来の平和を作るシリアの子ども達を応援するために、Piece of Syriaは「どこからも支援が届かない場所」への教育支援を実施しています。是非、皆さんも一緒に、シリアの未来を、平和を一緒に作る仲間として、パートナー会員となって、継続的なご支援に参加しませんか?
パートナー会員になってくださった方には、今回のような有料のイベントに、無料招待もさせていただいております。
是非一度、活動の内容について見ていただければ幸いです。
【パートナー会員様、無料ご招待のイベント】
<6/20 難民の日イベント>
やさしいシリア解説(中級編)シリアに帰った難民の人たちと、2021年のシリアの日常
【日時】6月20日(日)19:00〜20:30(開場 18:50)
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