まるゼミの歴史2020(第3章)
2020/8/7 21:55
代表の加藤拓馬です。
まるゼミの歴史を振り返るシリーズ第3章。
(前回のあらすじ)
ゆきちゃんのスピーチで泣く
経営未来塾で事業構想を考えるにあたり、改めて地域課題を整理していて衝撃を受けた数字があります。
それは耳にタコができるくらい聞いていたはずの「少子化」でした。
数字で可視化すると、半島の中学生数は震災後10年で半減以下になることが分かったのです。
2012年:193人
2022年:73人
(2016年当時の筆者調べ)
※今ももちろん大きくは変わっていない
衝撃でした。
「このままじゃこのまちがなくなる」
経営未来塾を終え、まずファーストステップとして全国でも注目されている島根県海士町の取り組みを学びに行くことにしました。
視察のコツは、多団体でチームを組むことです。人は一緒に旅をすると、変な連帯感が生まれます。ちょっとした拡張家族です。
それが視察後の推進力になるんですね。
今思えば、NPO底上げの成宮さんとはここから縁が深くなっていったんだなぁ。
2017年2月のことです。
海士町の「教育魅力化」関係者の界隈では変な風習がありました。
宴会の締めで、みんな立ち上がり輪になって手をとり「ふるさと」を唄い上げるのです。
ただし、一字だけ替えてある替え唄です。唄はわんわん響きます。
「こころざぁしを はぁたぁしにぃ いつのぉひぃにかぁ かぁえらぁん」
(志を果たし“に” いつの日にか帰らん)
ふるさとは都会で志を果たしてから帰ってくる場所じゃない、都会で力を蓄え志を果たしに帰ってくる場所なんだ、と。
ここの大人はみんなホンキだ。震えました。
当時の私にとって、教育事業に取り組む目的は、地域への愛着を育てて将来のUターン率をアップさせることでした。
「浜々を起点として集落を成す、この半島の豊かなくらしを次世代につないでいきたい」
バトンをここで置いちゃいけない、と。
その想いの根っこにあるは、2011年から今まで右も左も分からないような22歳の生意気青二才を、褒めて叱って育ててくれた唐桑半島の地元の人に対する「恩」でした。
海士町視察を機に、高校生マイプロジェクトアワードが気仙沼で生まれました。
高校生ひとりひとりの挑戦を、大人たちが寄ってたかって応援、伴走するなんとも“おせっかい”な事業です。
最後に高校生たちは堂々と自分だけのプロジェクトをまちの大人たちにプレゼンします。
(全国アワードがすでに存在していて、その気仙沼版です。市町村単独で行うアワードの規模としては全国一になっていきます)
春には「すなどり先生」を「じもとまるまるゼミ」と改名してリニューアルします。
唐桑中学校の総合学習のお手伝いも飛躍的に増えました。特に3年生の総合では、グループに分かれ自分たちでテーマ設定した課題を半年間かけて実践し、文化祭に向けてまとめるという学習が始まり、私もしょっちゅう学校に通ってました。
今思えば、「探究」学習は2017年、このマイプロと総合学習から始まっていたんですね。
さて、ここで次のもやもやにぶち当たります。地域教育のジレンマ、です。
「集落コミュニティは夢を諦めさせる装置だ」
という言葉をふと思い出したのです。いつだか、先輩に教えてもらった言葉です。
どういう意味でしょうか。
集落においては、米屋の長男は米屋を、豆腐屋の長男は豆腐屋を継いでもらわないと困る。
それを東京で医者になりたい、アメリカでアーティストになりたい、と言われても、集落が困るというのです。
だから、長男の夢を諦めさせることで集落の機能は維持されてきた、と。
なるほど、20世紀までの“いなか”のあり方じゃ、続かないワケだ。
中高生の挑戦を応援し、ひとりひとりの夢を応援するようになって、違和感を覚え出します。
漁師になれよ、将来は気仙沼に帰ってこいよ、と子どもたちに押し付けるのは、勝手に移住してきて、勝手に保守化している私のエゴでしかないんじゃないか。
こりゃ、集落機能のアップデートが必要になるぞ。
2018年、私はまるゼミの舵を大きく切ります。プログラムはそのまま、目的を一から作り直すのです。
この「まるゼミ2.0」から本当の意味での教育事業が始まったのかもしれません。
「夢を諦めさせる装置」じゃなく、集落を「夢を広げる装置」にしたい。
逆説的だけど、まわりまわってそれが集落の生き残る道になるはずだ。
まちぐるみで、子どもたちの背中を押してあげるのです。
「あなたは今から何者にでもなれる存在なんだ。自分を信じて出航したらいい」と。
そうすることで、その子はきっとこの先どこに居ても地元といい関係を築き続けるでしょう。
つづく
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