私たちの取り組む課題
スポーツから最も遠い子ども達にスポーツの機会を届ける
「7人にひとりの子どもが貧困状態」「5日にひとり、子どもが虐待で亡くなっている」などという悲しいニュースが立て続けに流れる今の日本には、スポーツに”手が届かない”子どもたちが少なからずいます。
「スポーツのチカラで子どもたちに夢を」という呼びかけも届かず、スポーツ教室を開催しても、その子たちは会場にたどり着くことはできません。
その”手が届かない”理由はさまざまですが、そのような子どもたちにスポーツの機会を提供するため、韓国で始まったドリームバス・スポーツメンタリングが2014年から日本でも開始されました。1年目は母子家庭、2年目以降はDV(家庭内暴力)被害者の家庭を支援してきました(Sport For Smileとの共催)。
DVというと他人事のように聞こえる人も少なくないかもしれませんが、昨今被害者数は急増し、既婚女性の3人にひとりがDV被害経験者であり、若年層では女性の2人にひとり、男性の3人にひとりが経験しているというデータもあります。
DV家庭の子どもは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥るだけでなく、別居を余儀なくされるタイミングで、学校に行かなくなる子も少なくないようです。なかには、母親が精神的に不安定になり家事もできないため、小学生の女の子が家事や小さな弟や妹の面倒をみなくてはならず、そのために学校に行けなくなるケースもあるようです。また、同居している場合でも、家では常に緊張状態にあり、安心して過ごすことはできません。(状況は各家庭の事情によりさまざまです)
自信をつけ、人を信じる力を身に着ける
そのような苦しい現実と向き合わなくてはならない子どもたちの多くは、人と接することを恐れるようになり、大人を信用しなくなり、人生の大切な時期を、辛い思いをして過ごさなくてはならなくなってしまいます。小学生の段階で、「昔に戻りたい」とさえつぶやく子もいます。
スポーツメンタリングでは、このような状況にある子ども達に、友達と一緒にスポーツを楽しみながら、信頼できるお兄さん・お姉さんをつくる機会を提供する半年間のプログラムです。
半年間のプログラム終了後は、メンターとメンティーは会うことはありません。ですが、子ども達は半年間の素晴らしい体験から、「そばにいなくても自分を応援してくれる誰かがいることを信じてがんばる」ことができるまでに成長しているのです。
なぜこの課題に取り組むか
運動は健康によいだけでなく、傷ついた心にも効く
運動は健康によいと言われますが、体だけでなく心にも効くことが研究で証明されています。ニューヨークタイムズ紙によれば、筋トレや体を動かすことでほぼ確実にうつ病を軽減できるとした研究が30以上あるとのことです。
また、専門家によると、虐待や暴力をうけると、脳のやる気をつかさどる部分が傷つけられるそうで、DV被害者家庭の子どもたちはほぼ例外なくPTSDのため、最初は話しかけられてもうつむいてしまうか、机にもぐることしかできなかったような子が、自ら手を上げて発言できるようになったり、友だちを思いやれるようになったりします。
心に大きな傷を負い、家に引きこもっていた子や、学校にあまり行けていない子も、体を動かすことで、前向きになることができ、夜型生活の子の生活にもポジティブな変化がみられるような効果も出ています。
小学校高学年での体験が大事
DV被害者支援に数十年携わってきた専門家によれば、スポーツメンタリングのような、「大切にされる経験」はPTSDの子ども達にとって非常に重要で、それを心身の成長が著しい小学校高学年で体験することに大きな効果があるのだそうです。
そのような大切にされる経験を小学校で受けると、「心の筋肉」ができて、のちにネガティブ経験をしても、自力で立ち直ることができるようになる、そういった経験は心がやわらかいうちにするのがよい、と。
難しい分野にこそ、スポーツの力を活用
DV被害者家庭の子ども達に支援の手を差し伸べるのは、簡単ではありません。プライバシーを守るため、実施日程や会場はすべて非公開で、送迎付きで実施していますが、ご自身もDV被害者であるお母さまや保護者の方々と日程調整やご案内をしながら、またDV被害者の心理や特徴を事前に学んだうえで、配慮をしながら進めなくてはなりません。
一般的なスポーツ教室などに比べて、運営が大変な部分も多いですが、でも、だからといって、私たちがあきらめてしまったら、その子たちは、もしかしたら一生スポーツに
辿り着けないかもしれません。
スポーツメンタリングは、このような子ども達にも手を差し伸べ、友達とスポーツを楽しみ、信頼できるお兄さんお姉さんと一緒に子どもらしくいられるひとときを提供します。
寄付金の使い道
いただきましたご寄付は、下記のスポーツメンタリング活動費用に限定して大切に使わせていただきます。
- 会場使用料:毎年10回程度のスポーツセッションで使用する会場の使用料
- 交通費:メンターとメンティー、スタッフの交通費
- ドリンク代:毎回参加者全員に提供する水分補給のためのドリンク代
- 通信費:保護者の方とのやり取りを中心とした郵送費や電話代
- スポーツ傷害保険:参加者全員のスポーツ傷害保険加入費
- メンター研修費:会場使用料、オンライン通信料等
- スポーツ用具:メンティーへのプレゼントアイテム
- 開会式・閉会式費用:会場費、終了証書と記念品、資料印刷費等
- 事務局運営費:運営システム使用料や企画、広報関連業務経費等
- プログラム開発費:メンター研修マニュアルやセッション運営マニュアル等の改善等
- 寄付者向けイベント実施費用
- 雑費:文具、ファイル、救急キット等
- その他:夏場に朝ごはんを食べてこない子に提供するバナナ代等