私たちの取り組む課題
世の中には様々な違いがあります。
年齢も性別も、病気や障害の有無、民族や国の違い、もっともっと無数の違いがあります。
違いが違いのままでとどまることなく、差別に至っているケースが決して少なくない印象です。この差別が、貧困の原因になったり、世界に目を広げると紛争や戦争の要因にもなっていると思えてなりません。
とすると、世の中で日々起こる問題の多くが差別が原因ではないでしょうか。
わたしたち、なないろ未来財団は、この差別を一層したい。そう強く考えています。そして、差別がない向こう側、地域の方々、日々、豊かに暮らせるようやさしさあふれる社会の実現を目指します。
なぜこの課題に取り組むか
当財団の設立者の趣意書をもって、課題に取り組む理由を説明いたします。
---
一般財団法人なないろ未来財団 設立趣意書
今、思い返してみますと、曽祖父は、今でいう認知症を患っていたのだと思います。
ある時、衝撃的なことがありました。
祖父が曽祖父を、「バカ呼ばわり」したのです。
当時のぼくは、いまだ小学校低学年でしたので、意味が全く分かりませんでした。
なぜ、身内、まして実の父親を「バカ呼ばわり」できるのか。
ぼくは、曽祖父はもちろんのこと、祖父も大切な家族でしたし、どちらも大好きでしたから、全く意味がわかりませんでした。
祖父に対して負の感情は、ただこの一件のみで、どうにも腑に落ちませんでした。
ただし、祖父に問いただすことはできませんでした。なぜ、実父を「バカ呼ばわり」したのか。尋ねる前に、祖父は他界しました。
その後、祖父の三回忌くらいだったと思うのですが、祖母に思い切って聞いたのです。
祖母は静かに教えてくれました。
祖父は決して本気でバカ呼ばわりしていなかったと、実は、誰も聞いていないところでは「何か、親父に、美味いものでも食べさせてやってくれ」と祖父が祖母にしょっちゅう依頼していたと。
祖父への誤解が解けました。
大好きな祖父はやはり大好きな祖父でした。
と同時に、ものすごく寂しい気持ちになりました。
なぜ、実の親子なのに、堂々とやさしくできなかったのだろうと。
きっと、当時は、今以上に、社会全体が認知症に対して厳しい時代、家族もまた厳しくすることが時代の標準だったのかもしれない。そう考えると、祖父は父親をバカ呼ばわりするのは、不本意ながら建前でやっていたのかもしれないと思うと、とっても悲しくなったのです。
だから、祖父は何も悪くない。
悪いのは、認知症(当時は痴呆症)に対する偏見や差別に満ち溢れていた当時の社会なのだと。
今、認知症への偏見や差別は、間違いなく、曽祖父が生きていた時代よりも少なくなっています。
もし、今、曽祖父と祖父が生きていたのなら、変な建前をせずとも、祖母を介さなくとも、祖父自身で曽祖父にやさしく接することができたのではないかと思うのです。
そう考えると、大切な家族をも分断しかねない、社会にある様々な偏見や誤解、差別を恨まざるを得ないと思うに至りました。
僕らは、誰一人とて同じ人間はいません。
年齢や性別の違い、病気や障がいの有無はもちろんのこと、背が高かったり低かったり、足が早かったり遅かったり、本当にいろいろな違いがあります。
しかし、その違いは、どれもかけがえのないものです。
どれが優秀で、どれが劣っているということは絶対にないと思うのです。
違いのすべてが尊く、尊重されてしかるべきです。
前出の認知症も全く同じ。認知症があってもなくても、私たちは同じ人間。認知症の有無で区別されることはあっても、差別されることは絶対にあってはいけないと思うのです。
あらゆる違いが尊重され、絶対に差別されることがない社会。
すべての人が、平等に、対等に、分け隔てなく、豊かに暮らせる社会。
僕はこれを、「こころのバリアフリー」な社会と呼びます。
僕の祖父や曽祖父がきっと味わったであろう悲しみや苦しみが、ぼくら世代、そして次世代の方々が同様に味わうことがありませんように。そのために、社会全体がこころのバリアフリーで満ち溢れますように。
この実現を、今回、創設したなないろ未来財団に託します。
令和2年7月14日
一般財団法人なないろ未来財団
設立者 松嶋大
寄付金の使い道
いただいた寄付金は、大切にわたしたちの活動の原資にさせていただきます。