私たちの取り組む課題
風テラスについて
私たちNPO法人風テラスは、性風俗の世界で働く方向けに無料の生活・法律相談窓口を運営している非営利団体です。
だれもが「今日の安心」と「明日の選択肢」を得られる社会を実現する、というビジョンの下、弁護士とソーシャルワーカーのチームで、性風俗の世界で孤立・困窮している人たちの不安に寄り添い、明日につながる一歩を踏み出すためのお手伝いをしています。
当事者たちの「今」=不安や悩みを共感的に受け止め、「次」につなげる=必要な支援や社会資源につなぎ、居場所や出番を見つけるお手伝いをすることを通して、どのような立場や環境に置かれていても、だれもが「今日の安心」と「明日の選択肢」を得られる社会の実現を目指しています。
なぜこの課題に取り組むか
なぜ「夜の世界」か
全国で、約44万人。これは、性風俗店で働いている女性の推定人数です(2024年4月現在)。
性風俗や売春といった「夜の世界」は、失業や生活困窮、病気や障害、家庭の事情などで、仕事や居場所を見つけることができず困難を抱えた人々が集まりやすい場所の一つになっています。
しかし、性風俗の世界は、慈善事業でも生活困窮者のセーフティネットでもなく、あくまで「ビジネス」です。そのため、高収入を稼ぎだせる人がいる一方で、中には、最低限の生活や権利を保障されない人が存在する現実があります。
店舗の看板もなく、インターネットでの集客・求人が中心になっているため、当事者たちがいつ・どこで・どのように働いているかは、外からは分かりません。
世間の偏見や差別を恐れて、働いていることを誰にも言わない人が大半であるため、彼ら彼女たちは、世間から「見えない」存在になっています。
さらに、性風俗で働く・働いていたということが足かせとなり、家族や友人からも孤立して、公的支援にもつながれずに、困難を深める人も少なくありません。
私たちは、性風俗の世界に足を踏み入れたことで孤立してしまう人を一人でもなくしたいという思いから、「夜の世界で生きる人たちの『今』を受け止め、『次』につなげる」というミッションを掲げ、性風俗で働く人々向けの無料の生活・法律相談窓口を運営しています。
「司法と福祉の連携」を夜の世界に届ける
「何からどうやっていけばよいのかわかりません」
相談者の中には、いくつもの課題が絡み合い、適切なタイミングで適切な人からの支援が得られずに、性風俗の世界でどうにか生活してきたという方が大勢います。
寄せられる相談の文末に、「何からどうやっていけばよいのかわかりません」という言葉を何度も目にしてきました。
困難が重なり合っているケースでは、弁護士とソーシャルワーカーが協働して初期の段階からサポートに入ります。
喫緊の先送りできない問題(たとえば、家賃滞納や借金など)を弁護士がサポートし、生活環境の改善や医療アクセス、地域社会からの孤立など福祉的なサポートをソーシャルワーカーが担うことで、山積した悩みの中で動けなくなった当事者に寄り添いながら解決の糸口を探す、一人一人の道を照らす活動を続けています。
相談員は、対面や電話をはじめ、SNSチャットも活用して、不安を抱える当事者の「ありのままの気持ち」を受けとめることを大切にしています。
「どんなことでも話していい」という安心できる経験を重ねることで、人への信頼や社会につながる力を取り戻していく人々の姿が、私たちの励みにもなっています。
寄付金の使い道
いただいたご寄付は、SNS相談やアウトリーチを通して、夜の世界で孤立・困窮しているひとたちと「つながる」ため、
そして弁護士とソーシャルワーカーによる相談支援を通して、必要な社会資源に「つなげる」ために大切に活用させていただきます。
寄付金を活用した風テラスの活動内容
「つながる」ためのSNS相談・・・「今日の安心」を届ける
夜の世界で孤立・困窮している人たちに対して、SNSを通した情報発信と相談受付を行っています。
SNS相談を通して、ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)の相談員が相談者とつながり、ご本人の抱える不安に寄り添いながら、気持ちの傾聴や困りごとの整理、利用可能な制度・支援の情報提供を行っています。
風俗女子のお悩みを解決する啓発マンガ「あしたの嬢」
https://futeras.org/category/comic/
「高収入」という求人情報に惹かれて、あるいは友人に誘われるまま、性風俗の仕事に関する知識や情報を全く持たずに、この業界に入ってくる女性も少なくありません。
店舗とのトラブル、性暴力、性感染症、ネットの誹謗中傷などのトラブルが起こった際の対処方法や、税金や社会保障の仕組みを知らないと、後々大きな問題に発展してしまうことがあります。
風テラスでは、働く女性が現場でぶつかるトラブルへの対処法を、わかりやすいマンガの形で発信しております。
「性風俗で働くことを否定も肯定もしない」という立場から、現場の女性たちに「困った時に役立つ、正しい情報を届ける」という目的で、日々の情報発信を行っています。
「つながる」ことを通して、女性たちに「今日の安心」を届けることを目指しています。
当事者の女性たちが集い、気持ちを分かち合える自助グループの運営
性風俗の世界で働く女性たちの中には、「仕事のことを話せる相手が誰もいない」と悩んでいる人や、「同業の女性と、仕事の悩みや愚痴を語り合いたい」と考えている人も少なくありません。
当事者の女性たちが自分自身の気持ちや悩みを安心して話せる場として、LINEミーティングを活用したオンライントークスペース「女の子たちの60分フリー」を定期的に開催しています。
女性のスタッフがファシリテーションを行い、毎回和気あいあいとした雰囲気の中で、様々なトークが交わされています。
「つなげる」ための生活・法律相談・・・女性たちに「明日の選択肢」を届ける
- 弁護士・ソーシャルワーカーによる生活・法律相談
弁護士とソーシャルワーカーのチームで、借金、離婚、DV、店舗とのトラブル、ストーカー、ホストの売掛、ネットの誹謗中傷、性暴力被害、メンタルヘルス、社会保障の手続き、子どもの学費など、様々な生活・法律相談に応じています。
法律的な課題と福祉的な課題が入り混じったご相談も多く、弁護士とソーシャルワーカーがそれぞれの専門知識と持ち味を活かしながら、そして共感的な態度で相談者の気持ちに寄り添いながら、一緒に解決方法を考えていくお手伝いをしています。
他の支援団体や医療機関、及び全国各地の専門職や連携先とのネットワークをつくることによって、夜の世界で明日が見えずに孤立・困窮しているすべての人に、「明日の選択肢」を届けることを目指しています。
風テラスの運営
2020年のコロナ禍以降、風テラスに寄せられる相談の件数は急増~高止まりの状態が続いています。
2023年は、ウェブ広告を出稿して相談者を募る取り組みを行った影響(+787件)もあり、1年間で合計4,503件のご相談が寄せられました。
一方、まだNPO法人の設立3年目で、団体の組織体制や財源は決して盤石ではないため、対応できる相談件数にも限りがあります。
夜の世界で孤立・困窮している女性たちに「今日の安心」と「明日の選択肢」を届けるための活動を維持・継続していくためには、財源と人員を強化していくことが欠かせません。
私たちは、年間5,000人の女性に対して確実に支援を届けること、そのための体制を作ることを目標にしていますが、性風俗の世界で働く女性を支援している団体には、まだまだ寄付や支援が集まりづらく、助成金にも採択されにくい状況にあります。
しかし、ここで必要な支援が行われなければ、彼女たちの背景にある多重化・複合化した社会課題は、未解決のまま放置されてしまいます。
その結果、次世代への貧困や不幸の連鎖が繰り返され、そのコストは、私たちやその子どもたちが支払うことになります。
2024年4月、困難な課題を抱えた女性を支援するための法律(困難女性支援法)が施行されました。
こうした時代の流れの中で、夜の世界で孤立・困窮している一人でも多くの女性とつながりながら、彼女たちに「今日の安心」と「明日の選択肢」を届ける支援の必要性を社会に訴えていきたい、と考えています。
皆さまへのメッセージ
- 坂爪真吾(さかつめ・しんご) NPO法人風テラス 理事長
私が風テラスを立ち上げるきっかけとなったのは、2015年に、東京・鶯谷の激安デリヘル店を取材で訪問したことです。
雑居ビルの中にあるお店の待機部屋には、生活困窮・多重債務・DV被害・発達障害・軽度知的障害・精神疾患など、様々な困難や課題を抱えた女性たちが集まっていました。
明らかに福祉的・法律的な支援が必要にもかかわらず、彼女たちの多くは、公的な支援をほとんど受けられていない。仕事のことを誰にも話せないため、行政にも、支援団体にも、どこにもつながれない。
「この待機部屋に、彼女たちを適切な支援につなぐソーシャルワーカーがいれば・・・!」と痛感しました。
そこで、知り合いの弁護士とソーシャルワーカーに声をかけ、経営者の方にご協力を頂いた上で、お店の待機部屋で女性向けの無料生活・法律相談会を開催したのが、風テラスの始まりです。
開始から約9年で、延べ1万人を超える女性たちとつながり、相談を受けることができました。
しかし、性風俗の世界には、誰ともつながることができずに、不安の中で孤立・困窮している女性たちが、まだまだ大勢存在しています。
一人でも多くの女性たちに、「今日の安心」と「明日の選択肢」を届けるため、あなたの力を貸してください。
あなたの温かいご支援、お待ちしております。