私たちの取り組む課題
視界がグニャグニャに歪んでしまう目と全身の免疫疾患 「フォークト-小柳-原田病(VKH)」の認知向上に取り組んでいます。
この病気は「原田病」や「VKH」などと呼ばれていますが、聞いたことがない人が多いと思います。
この病気は自分の免疫が暴走して、メラニン色素細胞を攻撃してしまう自己免疫性疾患です。
その為、メラニン色素細胞が多く分布する目、耳、脳の髄膜、皮膚、髪に主に症状を来します。
症状としては風邪のような感冒症状から始まり、その後、目の中のぶどう膜と呼ばれる所に炎症を起こし、
網膜剥離を起こして急激な視力低下を引き起こします。
同時に髄膜炎により認知症状を起こすことも、耳の炎症から難聴になってしまう事もあります。
また、皮膚や髪の細胞が攻撃されれば、髪が抜けたり白くなったり、皮膚に白斑が出て老人の様に白くなったりもします。
(昔話の浦島太郎はこの原田病で、現実とは違う世界を見て老人の様になったと言われています。)
原因が分かっていないだけではなく、一度発症した病気に対して 再発/慢性化を確実に止める安全な治療法も分かっていないのが現状です。
慢性化してしまうと、炎症を起こす度に視力低下を来し、緑内障や白内障などの続発性の合併症を引き起こし失明に至る事もあります。
この病気は日本では年間約600-800人が発症すると言われていて、
珍しい病気ではありますが、極端に希少な疾患というわけでもありません。
そして、早期治療ができるかどうかが予後の決め手となり、診断が遅れる事で重症化/慢性化に繋がり、
一生のQOLに関わる後遺症や障害の有無を左右します。
beat VKHは、この病気の新たな発症者の重症化防止、及び、治療法確立の為の研究促進を目的として病気の認知向上に取り組んでいます。
なぜこの課題に取り組むか
暗く歪んだ世界
私は、ある日突然の発症しました。
字の直線の部分がギザギザと波打つ様に見える事に気づき、そこから更に視界は既に暗くなっていき、
目の前に墨汁を垂らしたような黒いシミがついて、ギザギザだけでなく目の前のものがグニャグニャと歪んで見えるようになっていきました。
そして、一日の内に一気に、人の顔が真っ黒のグニャグニャに歪んだ怪物の様に見える程、おかしな見え方になりました。
そこからはホラー映画の様な、暗い水の底から壊れた世界を見ているようでした。
緊急入院をして高容量のステロイドで治療をして退院した後も、ずっと世界が壊れた様な気持ちの悪い見え方が続きました。
イメージとしては、魚眼レンズや壊れた鏡、左右で度の違うメガネを通して見ている様な感じです。
夢は病気の前の見え方で見て、朝起きて目を開けた瞬間に捻じ曲がった世界が飛び込んでくる。
まるで現実が悪い夢の様に感じる毎日でした。
主治医の先生に症状の相談をしても、
「見え方に関してできる治療はない。今できることは再発をさせない様に治療をすることだけ。再発してしまえば、今よりも更に見え方が悪くなり続ける。」
と言われ、もっともな発言ながらも、なんだか病気に脅迫されている様な気分になりました。
その上再発を防ぐ治療法も確立しておらず、現状の治療の為に内服するステロイド薬の副作用によって緑内障や白内障になったり、腎臓や肝臓が壊れたり、大腿骨頭が壊死して人工関節が必要になったりもします。
目の前が真っ暗に歪んで希望の光も見えなかった中で思ったのは「こんな恐ろしい思いは、誰も経験する必要ない。」という事でした。
早期治療の大切さ
私は、最初に行った病院では、放っておけば治る「中心性網膜症」という病気だろうと診断を受けました。
より大きな病院での精密検査をお願いしたのですが、予約は次の日の朝。
本日中に行きたい意向を伝えても、「予約は明日です。」と睨まれました。
放っておけば治る病気と診断されている事もありその日は帰宅しました。
その一日の内に信じられない程症状は激しく悪化し、黒い炎症の影が濃くなりました。
約半年たった現在、幸い「矯正視力」は戻ってくれましたが、見え方はまだ完全には戻っておらず、眩しさなど様々な症状は続いており、
ステロイドを服用しながら副作用が起こらない事を祈りながら治療を続けています。
薄くはなったものの視界に見える黒い炎症の跡を意識する度、
「あの時、発症した日に無理やりにでも気付いた段階で精密検査を受けられていれば」と思います。
病院で診断がつかなかったり、小さな歪みの段階で仕事の忙しさなどから病院に行かず、重症化してから診断、入院となる人も多くいるようです。
上記で述べた通り、重症化した場合、失明のリスクを含め残りの人生一生のQOLを大きく下げかねません。
共有できない辛さ
「気持ちの悪い見え方」というものは、"骨折"などの様に一目見て分かる様なものではありません。
画像スキャン上は何の異常が無くても、見え方がおかしいと訴える患者が殆どです。
Cの空いてる方向を当てる「視力」と違って、定量化もできない為、
自ら経験していない医者と患者の間にも「苦しさへの理解」にギャップがあり、
多くの患者が更にそこに悩み、共有できない辛さに孤独感を感じています。
退院時当時の主治医に見え方の相談をした時に言われた、
「日常生活ができればいいと思いますけど」という言葉にもそのギャップが感じられました。
そのギャップに加え、希少な疾患の上に、すぐに失明をしたり、確実に進行する訳ではない為、
あまり研究が多くされている訳ではないのも現状です。
知ってもらう ということ
患者会も無く情報の少ないこの病気の認知を上げる活動を行い、重症化する人の数を減らしたい、
そして安全な治療法のないこの病気の研究の進行を少しでも促進したいと考えて団体「beat VKH」を立ち上げる事にしました。
人間は得る情報の80%を視覚から得ると言われています。
その目の大切さを、病気になってからは毎日感じています。
「視覚」は、自分の見る「世界」そのもの。
共有できない辛さと、'ずっとこうかもしれない'という不安にどうしようもなく寂しい気持ちになります。
それゆえ視力障害は精神疾患の併発とも大きく関係していると言われています。
世の中には恐ろしい病気がたくさんありますが、「視覚」という私たちの「世界」を奪いうるこの病気はとても残酷なものです。
認知が上がることで、これから発症する人の重症化を食い止められると思います。
認知が上がることで、研究を促進し、既に発症している人の為の治療法を確立する助けになると思います。
寄付金の使い道
皆様から頂いた募金は全てbeat VKHに寄付され、フォークト-小柳-原田病(VKH)の認知を上げる為の活動 (チャリティTシャツ制作、病気の説明ムービー/ウェブサイト制作費、その他アクティベーション)の為の活動費用に使わせて頂きます。
どの抗原に対して免疫細胞の攻撃がなされるかが分かってきている今、その特定の抗原をターゲットとした免疫療法の進歩に期待が寄せられています。
この寄付により、その未来を少しでも早く現実のものにできればと思います。
500円など少額でも大きな助けになります。
ご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします!
また、ご自身や回りの方で、万一「線が歪んで見える」という事があったら、
何があっても優先してすぐに眼科を受診してください。
そして「中心性網膜症」と言われても念の為「原田病」の検査を希望してください。