表紙の写真は、南太平洋・ソロモン諸島でビブリオバトルを開催した際の様子です。
「お気に入りの本を5分で紹介する。2〜3分ディスカッションする。そして、『どの本が一番読みたくなったか』を投票する——」
2007年に京都大学の谷口忠大が考案したこのシンプルなルールは、日本中の学校・図書館・企業へと広がっていきました。2016年に一般社団法人ビブリオバトル協会として歩み始めてから、今年で10年目を迎えます。
この間、私たちは多くの「小さな変化」を目にしてきました。不登校だった一人の若者が、「否定されない場」で数年ぶりに自分の好きなものを語り、「その本、面白そうだね」と受け入れられた瞬間。青年海外協力隊の手によって、図書館も本屋もないソロモン諸島にまでこの輪が広がっていったこと。
しかし、正直にお伝えしたいことがあります。SNSで3,000人以上の方々に見守られながらも、会費だけでは賄えない運営コストのため、コロナ禍以降シンポジウムの対面開催は関西圏に偏り続けています。
10年目の節目に、私たちが求めているのは「集金」ではなく、この文化を共に育む「仲間」です。目標金額は40万円。シンポジウムの全国開催と、協会運営の継続に充てます。
「正解」ばかりが求められる今だからこそ、誰もが安心して自分の言葉で語れる場所を、日本中のあちこちに守り続けたい。私たちの「10年目の等身大な想い」を、少しだけ聞いていただけませんか。
ストーリー
効率化の時代に、あえて「5分間」を分かち合うということ
こんにちは。一般社団法人ビブリオバトル協会です。
便利な世の中になりました。SNSで流れてくる短い動画や本の要約は、忙しい私たちを助けてくれます。でも、その速い流れの中で、ふと「自分の言葉で語ること」を忘れてしまいそうになる夜もあります。
そんな時代に、私たちはあえて、一冊の本について5分間も語り、誰かの話をじっと聴くという、一見すると非効率な場をつくり続けてきました。
ビブリオバトルとは
ビブリオバトルのルールは、驚くほどシンプルです。
「お気に入りの本を5分で紹介する」
「批判はせず、その本について知りたいことを質問する」
「参加者全員で、どの本が一番読みたくなったかを投票する」
考案者の谷口忠大が掲げた理念は、「人を通して本を知る。本を通して人を知る。」
このシンプルな場が、誰かにとっての「安心できる居場所」になる。私たちは活動を通じて、そのことを教えられました。

一冊の本が、人生を変えた——会員・高橋一彰さんのストーリー
ここで、ある会員さんの話をさせてください。

普及委員会関東地区の高橋一彰さんは、中学時代にいじめを経験し不登校に。その後、精神病棟への入院を経て、発達障害の診断を受けました。通信制の高校・大学に通いながら、偏見や生きづらさの中で10代を過ごしたと言います。
20代に入り、東日本大震災が起きた2011年。「こんな自分でも何かで活躍できたら、世の中は見てくれるのだろうか」と模索していた高橋さんは、大学図書館の掲示板でビブリオバトルのポスターを見つけます。実際の大会を観にいったとき、こう感じたそうです。
「この大会で優勝できたら、人生が変わるかもしれない」
それがすべての始まりでした。普及委員会に入会した高橋さんは、関東をはじめ全国各地、さらには韓国のビブリオバトルにも参加。「全国大学ビブリオバトル2017〜首都決戦〜」では、中学時代のいじめの経験と重ね合わせながら、自分の心を救った一冊を紹介し、ゲスト特別賞を受賞しました。
現在、高橋さんはSNSで毎日1冊・2000日以上にわたって本を紹介する「書籍PRの専門家」として活動する傍ら、不登校や発達障害の当事者を支援するサポートコーチとしても歩みを続けています。
「私の現在の活動の原点には、常にビブリオバトルがある。私の人生は、ビブリオバトルによって大きく好転したと言っても過言ではありません」(高橋一彰さん)
ビブリオバトルは、書評の技術を競うものではありません。「何を言っても否定されない」という安心な土壌があるからこそ、ふっと心が軽くなり、自分の言葉が外に向かっていく。高橋さんのような歩みを、これからも生み出し続けたい。それが、私たちの願いです。
10年間の歩みと、正直なお願い
この10年間、ビブリオバトル協会は、普及委員会の540名の会員さん、そしてSNSで応援してくださる3,000人以上の方々に支えられながら活動を続けてきました。国民文化祭にも採用され、活動の輪は日本全国へと広がっています。
そして、その輪は海を越えました。
青年海外協力隊員として南太平洋のソロモン諸島に赴任した普及委員会の益井博史さんは、着任早々、衝撃的な現実に直面しました。
「図書館も本屋もない。」子どもたちの周りには、本がほとんど存在しない環境だったのです。
そんな中、子どもたちに読書の楽しさを届けようと、ビブリオバトルを広める活動に取り組みました。
最初はおそるおそるだった子どもたちが、回を重ねるごとに変っていき、自分の言葉で生き生きと本を語り始めたと言います。その奮闘の記録は、のちに書籍『ソロモン諸島でビブリオバトル』(子どもの未来社)として刊行されました。
「人を通して本を知る。本を通して人を知る。」——この理念は、言語も文化も異なる島の子どもたちにも、確かに届いていたのです。
しかし今、これだけの広がりを持ちながら、活動を継続するための現実的な課題に直面しています。理事・代表はすべてボランティアで支えていますが、事務局運営・システム維持・講師調整など、活動の「心臓部」を動かすための費用が、会費だけでは賄えない状況が続いています。
皆さんのご支援が、その「止めない」を支える直接の力になります。
なぜ、シンポジウムを「関西以外」でも開きたいのか

もう一つ、私たちがずっと心苦しく思っていることがあります。それは、ここ数年、全国規模の「ビブリオバトル・シンポジウム」が、コロナ禍以降、関西圏でしか開催できていないことです。事務局の拠点が関西にあり、限られた予算の中では、スタッフの移動や会場設営のコストを捻出するのが精一杯だったからです。
「次は、私の地元で開いてほしい」
「オンラインもいいけれど、やっぱり直接会って、本への熱量を分かち合いたい」
関西以外の会員さんからいただくこうした声に、私たちは「予算の都合で……」と、何度も申し訳ない気持ちになってきました。
「住んでいる場所や、予算の有無によって、言葉を交わす機会に差があっていいはずがない」
私たちはそう願っています。だからこそ、10年目のこの節目に、関西という枠を越えて、日本中のどこへでも「ビブリオバトルの種」を届けに行ける基盤をつくりたいのです。
全国の「熱量」を見つけ、称える——Bibliobattle of the Year

ビブリオバトルの輪が全国に広がるなかで、各地にユニークな取り組みが生まれています。そうした「ひとつひとつの熱量」を見つけ出し、光を当てるために、私たちは2016年より 「Bibliobattle of the Year(BoY)」 を実施してきました。
ビブリオバトルに関わる顕著な活動を行った個人・団体を毎年表彰するこの制度は、優秀賞・特別賞・新人賞・大賞の4つの賞で構成され、普及委員会の会員・非会員を問わず対象としています。2025年でちょうど10回目を迎え、受賞者の活動は全国各地の実践者たちの励みとなってきました。
まだ知られていない優れた活動を自ら発見し、全国に届ける——それがBoYの使命です。表彰委員会の運営はすべてボランティアで支えられており、この「発掘と発信の場 」を続けていくためにも、皆さんのお力をお貸しください。
40万円で実現したい、「健やかな10年後」への一歩

※こちらはイメージ画像です。
今回の目標金額「40万円」は、単に不足を補うためだけの数字ではありません。皆さんと共に次の10年を歩み出すための「信頼の証」だと考えています。
いただいたご支援は、以下に大切に使わせていただきます。
・シンポジウム開催費(会場費・スタッフ交通費など):約25万円
・協会運営・BoY開催・システム維持費(サーバー・事務局運営費など):約15万円
※目標金額を超えた場合は、翌年以降のシンポジウム開催費に充てさせていただきます。
今、あなたの力が必要です。

もしこのプロジェクトが目標に届かなければ、問い合わせへの対応が遅れ、「やってみたい」という先生や学生の声に応えられなくなるかもしれません。
「あの本、よかったよ」という会話が、家庭・職場・教室にごく自然に生まれる社会を、皆さんと一緒につくりたい。
10年後、日本中のあちこちで、誰かが「自分の好きなこと」を安心して語っている。そんな未来を、ぜひ一緒に描いてください。
考案者・谷口忠大より、皆さまへ

photo:谷口忠大(京都大学大学院情報学研究科教授)
最後に、ビブリオバトル考案者であり、当協会代表理事の谷口忠大からのメッセージを添えさせていただきます。
いつもビブリオバトルの普及を、そして一般社団法人ビブリオバトル協会の活動をご支援いただき、誠にありがとうございます。
街の図書室で、誰かがカバンから一冊の本を取り出して、「これ、ほんとに好きなんです」と話しはじめる。それを聞いた誰かが、「読んでみたいな」と思う。ビブリオバトルは、つきつめればそれだけのことです。
考えてみると、少し不思議な時間です。人が5分かけて、上手じゃなくても自分の言葉で、好きな一冊を語る。聞くほうも、その本のあらすじがほしいわけではなくて、「この人がこの本を好きなんだな」という、その温度を感じにきている。
その場で起きていることは、じつはそう単純ではありません。好きな本を誰かに紹介することで一冊の本が動きはじめ、自分の言葉で語るうちに話し手が育ち、聞き手は読みたい本に出会い、気がつけばそこに本好きの仲間が生まれている。 私たちはこれを、ビブリオバトルの4つの機能——書籍紹介・スピーチ能力向上・良書探索・コミュニティ醸成——と呼んでいます。学校の教室で、街の図書室で、書店の片隅で、会社の昼休みで。同じひとつのゲームが、場所ごとにすこし違う顔を見せてくれます。
この、人を通して本を知り、本を通して人を知るという小さな循環が、いまも全国で続いています。そしてそれが、次の誰かが本を手に取るきっかけを、ひとつずつ作っているのだと思います。
発案から約20年、協会として歩みを始めて10年あまり。ここまで続けてこられたのは、この素朴な営みを「いいね」と言ってくださる方々のおかげです。次の10年、この小さな循環を、もう少し大きな輪にしていけたら。そんな願いを込めて、ご支援をお願いする次第です。
何卒、よろしくお願いいたします。
ご支援くださいました皆さまへ
ご支援くださった皆さまのお名前を、感謝の意を込めて、(一社)ビブリオバトル協会とビブリオバトル普及委員会公式サイトに掲載させていただきます。
掲載を希望されない場合は、お手数をおかけいたしますが、hmk@bibliobattle.jpまでその旨ご連絡くださいますようお願いいたします。

