「・・・これ何?」
約3年前、初めて児童養護施設を訪れたとき。正直なところ、少し距離感がありました。
子どもたちから向けられたのは、歓迎でも拒絶でもない、どこか遠くを見るような視線でした。
知らない大人が大きな装置を持ってきたぞ・・?と。
でも、車のゲームを一緒に遊び、本気で笑って、本気で悔しがるうちに、少しずつ名前を呼んでもらえるようになりました。
僕はそこで、「何かを教える」とか「助けてあげる」大人になるのではなく、「一緒に好きなもので遊ぶ大人」になることを選びました。
僕が一番好きなもの。それは、車やレースです。
本気でハンドルを握り、本気で悔しがり、本気で笑う。好きなものをとことん好きで居続ける。
そんな大人の姿を見せることで、「大人になっても楽しいことはあるんだな」と、少しでも思ってほしかった。
2023年の夏から、僕たちは一度も欠かさず施設に通い続け、その回数は34回を数えます。
今、施設では、古くなった2台のモニターとハンドル・座席を囲んで、10人以上の子どもたちが順番待ちをしています。
「早く代わってよ!」と言い合いが起き、モニターには寿命を知らせる線が入っています。
今年の夏休み、子どもたちが4人同時に、肩を並べて白熱したバトルができる環境を届けたい。
これは、単なるゲーム機を贈るプロジェクトではありません。
子どもたちと一緒に遊び、笑い、ときにぶつかり合う。
そんな時間を通して、夢中になれる子どもたちを増やしていくための一歩です。
ストーリー
こんにちは。「かたわら」代表の豊田佳明(ヨッシー)です。
僕たちは今、兵庫県西宮市を拠点に、児童養護施設へプロ仕様のレースゲーム機材を持ち込み、子どもたちと本気でモータースポーツを楽しむ活動を続けています。
「なぜ、児童養護施設でゲームなの?」
そう不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、僕たちにとっては、これこそが彼らと向き合うための、唯一無二の「言葉」でした。
始まりは、ある施設で感じた「距離感」でした

(画像は施設で絵を描いてよ!と言われて塗り絵のベースを描いたときのもの)
3年前、僕はミュージシャンのボランティア活動にカメラマンとして同行し、初めて児童養護施設を訪れました。
そこにいたのは、走り回り、笑い、はしゃぐ、どこにでもいる「普通の子」たち。
でも、先生方の話を聞くうちに、胸の奥がざわつきました。
彼らの多くは、虐待やネグレクトなど、さまざまな大人の事情で傷つき、ここに辿り着いています。
そして、施設を出て社会に飛び出した後、周囲とのコミュニケーションに悩み、就職先を早期に離職してしまう子が少なくないという現実。
彼らに必要なのは、一時的な「かわいそう」という感情による施しではないのかもしれない。
ランドセルや文房具を届ける。それも素晴らしい支援の形です。でも、僕にできることは何だろうと考えたとき、頭に浮かんだのは、僕自身が救われてきた「遊び」の時間でした。
支援者と被支援者という関係ではなく、ハンドルを握れば対等になれる。
もっと泥臭く、もっと対等に、「本気で自分たちと関わってくれる大人」として、彼らの隣に座りたいと思ったのです。
震災、DV。僕を支えてくれた「大人の存在」

写真提供:神戸市 CC BY 2.1 JP
僕がなぜ、ここまで彼らの心に寄り添いたいと思うのか。
それは、僕自身の過去と無関係ではありません。
僕は1995年、阪神・淡路大震災の被災者でした。
家を失い、中学校の体育館で避難生活を送ったあのとき、全国から届く物資や自衛隊の方々の助けに、どれほど救われたか。「いつか自分も、何らかの形で恩返しをしたい」という想いは、僕の心の底にずっとありました。
もう一つ、僕には個人的な葛藤があります。
家庭内での父のDV、そして両親の離婚。
僕は、自分の意見を言うことが怖い大人になりました。
でも、そんな僕を救ってくれたのは、母や祖母の深い愛情、そして僕を助けてくれた周りの大人たちでした。
「人は傷つくだけでなく、支えられることでも変われる」
それを知っている僕だからこそ、しんどさを抱えた子どもたちに、「何かを教える先生」ではなく、「安心して一緒にいられる大人」として関わりたい。
それが僕の、この活動における唯一の原動力です。
そしていつか、自分が誰かを支える側になって欲しい。誰かを支える経験は、きっと彼ら、彼女らにとっても大きな自信になると思っています。
「来月も必ず来るね」という、34回の約束

ボランティアは、無理をすると続きません。
もし途切れてしまえば、それは子どもたちにとって「また大人がいなくなった」という、新たな裏切りの経験になってしまう。
だから僕は、自分が本気で好きで、長く続けられるもので関わろうと決めました。
それが、車でした。
僕は鈴鹿サーキットで実際にフォーミュラカーを走らせるほど、モータースポーツに魅了されています。
「お兄さんは車が大好きだから、一緒に遊んでくれる?」
そんな気持ちから始まった活動ですが、子どもたちは、最初は冷ややかでした。
「どうせ、一回きりだろ」
そんな心の声が聞こえてくるようでした。
だから、僕は約束をしました。
「来月も必ず来るね」
2023年の夏休みから、僕はその約束を一度も破っていません。
仕事が忙しくても、気分が乗らないような日でも、毎月通い続けました。
これまでに34回。

今では、子どもたちは僕のことを「ヨッシー」、もう一人の仲間のことを「イクミン」と呼び、施設の玄関で僕の姿を見つけると、肩に飛び乗ってくるほどになりました。
そして、帰り際には「来月もまた来てね!また持ってきてくれるよね!」「えー、来月は31日なん!遅いわ〜もっと早く来てよ〜」などと期待してくれている様子も感じるようになりました。
安全な場所で、本気で悔しがれることの価値

去年の夏、僕たちは施設で「夏休みトーナメント」を開催しました。
決勝戦。30秒前まで勝っていた女の子が、最後の最後で逆転負けを喫しました。
その瞬間、彼女は人目も憚らず、大泣きしました。
「悔しい! 2位なんて嫌だ!」
その叫び声を聞きながら、僕は最初、「可哀想なことをしたかな」と少し悩みました。
でも、後で気づいたんです。
「安全な場所で、本気で悔しがれること」が、この子たちにとってどれほど貴重な体験かということに。
彼らの日常は、常に我慢の連続です。
自分の感情を押し殺して生きることが当たり前になっている彼らが、ゲームという安全な世界の中で、剥き出しの感情を爆発させる。
負けて泣き、次はどうすれば勝てるかを考え、またハンドルを握る。
そのプロセスこそが、彼らが社会に出たときに自分を守る「自信」になるのだと信じています。
線が入ったモニターと、10人の行列

活動を続ける中で、大きな壁にぶつかっています。
現在、50人規模の施設に対し、持ち込める機材はわずか2台です。
プレイできるのは同時に2人だけ。
残りの10人以上の子どもたちは、後ろでずっと順番待ちをしています。
「早く代わってよ!」
せっかくの楽しい時間が、喧嘩で終わってしまうこともあります。
さらに、活動当初は新品だった機材も、いつの間にかボロボロになっています。
モニターには寿命を知らせる線が入り、いつ止まってもおかしくない状態。
これまでは僕個人の持ち出しでなんとか繋いできましたが、個人の力だけでは限界が見えています。
「もし4台あれば、4人で同時にバトルができるのに」
4人同時プレイができれば、待ち時間は半分になります。
そして何より、仲間と同じコースで競い合い、抜いたり抜かれたりする熱狂を共有できる。
「今の見た!?」と笑い合える時間を、もっとたくさんの子に届けたい。
そのために、今回30万円の支援をお願いしたいのです。
支援の使い道:子どもたちの「夏」を最高にするために

いただいた支援金は、以下の機材購入に大切に使わせていただきます。
- ハンドルコントローラー 2台
- PlayStation 5 1台
- 専用座席 1台
- モニター 2台
これで、機材は合計4台になります。
今年の夏休み、僕は「4人同時対戦の夏休みトーナメント」を、最高の形で見せてあげたい。
待ち時間に喧嘩をするのではなく、仲間の走りを応援し、4人でゴールを駆け抜ける。
そんな景色を、子どもたちにプレゼントしたいのです。
「施設出身」が特別なことじゃなくなる社会へ

中学の頃、僕には耳の聞こえない友達が何人もいました。
僕にとって、彼らと交流することは全く怖いことではありませんでした。普通に友達として、そこにいたからです。
施設の子どもたちに対しても、同じことが言えると思います。
社会の多くの大人が、施設の子と関わったことがないから、「どう接していいかわからない」と構えてしまう。
その「構え」が、子どもたちをさらに孤立させてしまうのかもしれません。
だから僕は、まず自分から「施設というのがどういうものか知っている大人」になりたい。
一緒に本気で遊び、喧嘩し、負けて泣いて、笑い合う。
そんな時間を重ねた大人が一人でも増えれば、この子たちが社会に出た時の景色は、今よりずっと優しくなるはずです。
いつか、この活動を卒業した子が、「昔、ここで初めてハンドルを握ったんだ」と笑いながら、スタッフとして戻ってきてくれる。
そんな「支援の循環」が生まれる日を、僕は本気で夢見ています。
でも、まずは目の前の「半径5メートル」から。
「施設出身」であることが、特別なハンディキャップじゃなくなる社会を、ここから作り始めたい。
あなたへのお願い

30万円という金額は、決して小さなものではありません。
でも、この支援によって、子どもたちの夏が、そして彼らの未来への視線が、少しだけ変わるかもしれません。
僕は、彼らに「かわいそうな存在」でいてほしくない。
むしろ、「モータースポーツという特別な体験をした、カッコいい子」になってほしい。
そしていつか、誰かに楽しみを渡せる人になってほしい。
「楽しそうな大人もいるんだな」
子どもたちにそう思ってもらうためのハンドルを、僕と一緒に握っていただけませんか。
5,000円のご支援が、一人の子の「待ち時間」を「楽しい時間」に変える機材の一部になります。
単なる寄付としてではなく、子どもたちの笑顔を一緒に作る「仲間」として、加わっていただけたら嬉しいです。
そして、今回はクラウドファンディングという形で皆様にお願いしていますが、私たちは今後の目標として、最終的にNPO法人化を目指しています。
この活動を永続的なものへと変えていきたいと思っていますので、仲間としてささえていただいた事はこれからの未来へとずっとつながっていきます。
いつかは、施設出身の子供たちに代表をバトンタッチして、自分たちの後輩を支えてあげるんだ!といってくれる。
そんな世界を目指しています。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
よろしくお願いします。


