福島県いわき市小川町の奥にある、戸渡(とわだ)という地域。
この地では、明治前期、福島県で初めて乳用牛の飼育が戸渡牧場で始まりました。
草野心平の父方の祖父が県の依頼を受け、明治9年に脱脂粉乳の生産を開始し、その年の6月には牛乳が天皇に献上されたといいます。
その戸渡牧場の跡地は、のちにやまゆりが咲く「戸渡分校」となりました。
今は廃校となった静かな学び舎ですが、この場所には、70年以上前、生徒たちと当時の皇后陛下とのあたたかな交流がありました。
それは今も、戸渡の人々にとって大切な誇りです。
戸渡には、都会にはない、子どもたちがのびのび育つ環境があります。
野菜や果物のおいしさがあり、受け継がれてきた歴史と人のあたたかさがあります。
そんな戸渡の宝物を未来につないでいきたい。
その思いで集まったのが、「R399戸渡やまゆり会」です。
「退職後の人生を戸渡のために使いたい」
「自分たちの世代がやらなければならない」
そんな思いを胸に、立ち木の剪定や山ゆりを通じた歴史の発信、フリーマーケットの企画などに取り組んできました。
けれど、戸渡の魅力や歴史を次の世代へ手渡すには、もっと多くの方にこの地域を知っていただき、関わっていただく土台が必要です。
そこで今回、私たちは初めてクラウドファンディングに挑戦します。
戸渡の風景と歴史、そしてこの地域で生きる楽しさを未来へつないでいくために、どうか少しだけ、お力を貸してください。
ストーリー
戸渡分校に残る、地域の記憶
福島県いわき市立小川小学校戸渡分校には、戸渡の人たちにとって大切な記憶が残っています。
70年ほど前の昭和30年代、この分校に通っていた子どもたちが、修学旅行で訪れた皇居。そこに花がなかったことから、地域に自生していた「やまゆり」を皇室に届けたそうです。

届けたのは、地元小川町戸渡に咲くやまゆりの球根2,000個。やまゆりの球根は皇居内に天皇がお手植えされ、今でも皇居に彩りを与えています。
その後皇室からは、記念として5本のメタセコイヤが贈られ、戸渡分校の校庭に植えられました。このうち3本が、大きく成長した今でも、戸渡分校跡を見守り続けています。

校舎の中には、当時の写真や文章も残されていて、戸渡にとっての誇りが今も静かに息づいています。
けれど、そのことを知る人は、地元でも決して多くありません。
このままでは、校舎とともに、この地域ならではの記憶まで埋もれていってしまうかもしれない。私たちは、そんな思いを抱くようになりました。



原発事故のあと、変わってしまった風景
2011年の原発事故のあとには、この地域でも一時避難や自主避難が起こり、人の気配が薄くなった時期がありました。
その間に、山ではイノシシが増え、やまゆりの球根が荒らされるようになりました。かつて咲いていた花は少しずつ姿を減らし、分校のまわりも草木に覆われ、道路から校舎が見えなくなるほどになっていきました。

震災前には、趣のあるこの場所で、演奏会やイベントが開かれていた時期もありました。けれど、そうした場をつくっていた人たちの中には、被災をきっかけに地域を離れた方もいます。
人が集う機会も減り、戸渡分校の記憶も、やまゆりの風景も、暮らしから少しずつ遠ざかっているように感じられます。
「うちらの年代がやらなきゃいけない」
そんな中で立ち上がったのが、R399戸渡やまゆり会です。

メンバーには、この地域で生まれ育った人もいれば、戸渡の歴史や分校のエピソードに心を動かされて関わり始めた人もいます。
共通しているのは、これからの人生の時間を、地域のために使いたいという想いです。
「退職したあとの人生を戸渡のために使いたい」
「うちらの年代がやらなきゃいけない」
「生きている間に、ここに何かを残したい」
そんな思いから、分校跡やその周辺の伐採、草刈り、やまゆりの植え直しなどを、すべてボランティアで続けてきました。



私たちがやっているのは、ただ花を育てることではありません。
戸渡に残る歴史や風景、人の営みを、次の世代へ手渡していくための活動です。
やまゆりをきっかけに、人が集まる地域へ
私たちが目指しているのは、やまゆりを増やすことだけではありません。
やまゆりをきっかけに、戸渡や小川地区にもう一度人が集まり、「ここにはこんな魅力があるんだ」と感じてもらえる流れをつくること。そして、若い人たちにも「住んでみたい」と思ってもらえる、楽しい地区にしていくことです。
小川地区には、自然が豊かで、広々とした環境の中で子どもを育てられる良さがあります。のびのびと暮らせる環境があり、通勤や生活の可能性もあります。
だからこそ私たちは、この地域の魅力をもう一度見つめ直し、外にも伝えていきたいと考えています。

その一歩として、6月には梅の収穫体験や、地域の農家さんも参加するフリーマーケットを予定しています。人が立ち寄り、出会い、地域の魅力に触れられる場を、少しずつ増やしていきたいのです。
すぐに大きく変わるわけではないかもしれません。
それでも、まず動いてみること。やってみて、次に生かすこと。
そうやって少しずつ、戸渡のこれからをつくっていきたいと思っています。
ご寄付の使い道
今回のクラウドファンディングでいただいたご寄付は、やまゆりの育成に必要な資材の購入、分校跡や周辺の環境整備にかかる備品や燃料代、そして地域の魅力を伝え、人が集まるきっかけをつくるための活動費に充てさせていただきます。

これまで、活動にかかる道具代や燃料代、活動に必要な経費も、これまでは自分たちで負担してきました。一方で、自己負担が続いてしまうと、参加が難しいメンバーもいるはずです。今までに続けてきた取り組みを、これからも無理なく続けていくための土台にもしたいと考えています。
例えば…
- 3,000円で、5人の草刈り(戸渡分校跡地)の燃料代になります。
- 5,000円で、5人分の草刈りの刃が購入できます。
- 10,000円でボランティアの活動費(保険や交通費)に利用できます。
最後に
私たちは、大きなことを一気に成し遂げたいわけではありません。
戸渡に残る歴史や風景を守りながら、ここに暮らす人が「この地域で生きるのが楽しい」と思える場所を、少しずつ育てていきたい。そのために、できることを一つずつ積み重ねていきたいと思っています。

地域の中だけで抱え込まず、外から応援してくださる方とのつながりも、これからの戸渡には欠かせません。
ご寄付はもちろん、この活動を知っていただくこと、周りの方に伝えていただくことも、大きな力になります。
戸渡の風景と記憶を、次の世代へ手渡していくために。
どうか応援をお願いいたします。

