池田克己という詩人をご存知ですか。
1912年に生まれ、1953年にわずか41歳でその生涯を閉じた彼は、自分の内側と向き合う「自由に表現できる場」を求め続けた人でもありました。
2025年の今、私たちはSNSやネット文化の中に生きています。「いいね」や「シェア」の競争にさらされ、私たちの言葉は「反応」の波に呑み込まれていないでしょうか。自分の声がかき消されていくことも少なくありません。
誰かに認められるための言葉。誰かに勝つための言葉。
それはしばしば、私たち自身の自由を奪い、魂を疲れさせてしまいます。
だからこそ、私たちは今、池田克己の詩をこの世の中に届け直したいと願っています。
彼が夢見て追いかけ続けた「自由に表現できる場」を、一緒に創り直していきませんか。
その第一歩となる詩集の再出版に、ぜひ少しだけお力をお貸しください。
ストーリー
私たちは今、かつてないほど多くの言葉に囲まれて暮らしています。
SNS、ニュース、広告、コメント欄。スマートフォンを開けば、誰かの意見、誰かの感情、誰かの成功や怒りが、波のように押し寄せてきます。
その中で、自分自身の「ほんとうの声」を持ち続けることは、簡単なことでしょうか。
誰かに認められるための言葉。誰かに勝つための言葉。
そんな言葉ばかりが求められるなかで、私たちはいつの間にか、「ただ、自分の心と向き合い、自分のために紡ぐ言葉」を手放しそうになっているのかもしれません。
だからこそ、今、私たちは届けたいのです。70年以上前、そんな「言葉の自由」を誰よりも信じ、生きた詩人の声を。
幻の詩人・池田克己。その詩を、74年ぶりに未来へ。
池田克己について
池田克己(1912–1953)は、奈良県吉野町に生まれ、戦中の上海、戦後の鎌倉を拠点に活動した詩人・編集者です。
彼は単なる詩人ではありませんでした。装幀家、写真家、編集者としても活躍し、戦時中は上海へ移住、文芸誌「上海文学」や草野心平と詩誌「亜細亜」を発刊し、中国在住の日本人文学者を代表する存在となりました。
そして戦後間もない混沌の時代、帰国した池田克己は、詩人たちが自由に言葉を紡げる場を作ろうと、詩誌『日本未来派』を創刊します。『日本未来派』の活動は大きなうねりとなり、池田克己は、日本現代詩壇における中心人物のひとりとなりました。
池田克己の詩と真実
『日本未来派』は、思想や派閥ではなく、「未来に向かって歩もうとする人たち」が連帯するための場所でした。
そこには、「正しさ」を論じるのではなく、「切実さ」を生きる表現者たちが集っていました。そして現在も『日本未来派』は活動を続けています。
けれど、41歳という若さで夭折した彼の詩集は昭和26年に出版された『唐山の鳩』を最後に長らく絶版に。図書館や古書店の奥で眠り、やがて忘れ去られようとしています。
それでも、彼の詩は生きています。
「私たちは 自分の周囲にあるものは みんな正確な自然であることを知った
ああ 私たちの胸はときめく」
― 詩「新しい季節」より
日常に埋もれた自然の細部を、丁寧に見つめ、感じ、言葉にする。
それは、美しいだけの「詩的表現」とは異なる、「生活と言葉をつなぎ直す詩」でした。
池田克己は、「誰かに届けるための言葉」ではなく、「心の奥から、止めようがなくあふれてくる言葉」を信じていました。そして、たとえ粗削りでも、その人の「いま」を映す日常の言葉こそが、詩の真実を伝えると説いたのです。
「ああ いま あれらは爆発する あれらは燃える あれらは氾濫する
その萌黄いろの その鶸いろの その緑青色の その山藍摺いろの
その打ち合う緑のしぶき その折り重なる緑のなだれ
ああ満目の青葉若葉」
― 詩「青葉若葉」より
なぜ、今この詩集を復刊するのか?
私たちがこのプロジェクトを立ち上げた理由は、とてもシンプルです。
「いまの時代にこそ、この詩人の声が必要だ」と感じたからです。
SNSが生活の一部となった現代。
私たちは、見られること・評価されることに慣れすぎてしまったのかもしれません。
言葉を交わすことは、いつの間にか「競争」になり、速さや派手さが価値を決めるようになりました。
でも本来、言葉はそうしたものだけではなかったはずです。
うまく言えない思い、伝えられなかった涙、何度もつぶやいてきた自分への声かけ。
そのどれもが、大切な「あなた自身」の一部です。
池田克己の詩は、そうした言葉たちに光を当ててくれます。
飾り立てた言葉ではなく、癒しの言葉でもなく、ただ魂を掬い上げたその言葉に、
あなたの心の奥で眠っていた感情が、そっと揺り起こされるかもしれません。
「手を伸ばしているときも
心の傾斜しているときも
僕には僕のかたちがある
僕はそこからぬけ出すことはできない
たれもその中にはいることはできない」
― 詩「僕のひとり」より
この詩集をきっかけに、未来へ手渡したいもの
今回復刊する詩集は、池田克己の作品の中から、今の私たちに届くものを厳選し、現代の装丁で小型の冊子として制作する予定です。
それは単なる復刻ではありません。
もう一度、彼が願った「自由に表現する場」を、この社会に根づかせたいという願いでもあります。
池田克己が残した詩誌『日本未来派』には、こんな言葉が記されています。
「日本未来派は、生々しいムーブマンとしての、切実さの中にある」
時代にとらわれず、誰かの承認を超えて、心の奥にある“切実さ”から生まれた言葉たち。
そんな詩が生き続ける場所を、いま私たちは取り戻したいのです。
復刊詩集の発行はもちろんのこと、私たちはこの活動を通して、次のようなことにも取り組んでいきます。
- 吉野町に開設された詩人池田克己龍門記念館での展示や記録保存
- 学校や地域と連携した詩のワークショップの開催
- 詩人の生涯をたどるデジタルアーカイブの構築
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この詩集制作は、私たちにとって「夢の第一歩」です。
どうかその一歩を、あなたと一緒に踏み出させてください。
ご支援のお願い
このプロジェクトを立ち上げたのは、池田克己の生家跡のすぐそばに住む一人の町民です。
大阪から吉野に移住して5年間、私が池田克己の名前を耳にしたことはありませんでした。
その存在を知り、手に取った1冊の詩集に、雷に打たれたような衝撃を受けたことは忘れられません。
「この詩人の声を、埋もれさせてはいけない。」
その想いから記念館を準備し、仲間を募り、ご遺族の協力を得て顕彰会を設立。
この詩集復刊は、ずっとあたためてきた悲願でもあります。
ぜひ、あなたの手で、この詩を未来につないでください。
📚 リターン一覧
3,000円:詩集1冊+巻末にお名前掲載(希望者)
5,000円:詩集1冊+巻末にお名前掲載(希望者)+賛助会員登録(1年分)
10,000円:詩集5冊セット+巻末にお名前掲載(希望者)+賛助会員登録(2年分)
30,000円以上:詩集10冊セット+巻末バナー+賛助会員登録(3年分)+館内パネルにてお名前掲載(希望者)
応援メッセージ
「龍門が行く」一同様より
克己は清明な山河に囲まれた自然と重たい歴史の間(はざま)の地、吉野竜門に生まれ育ち東京を経て、文学の故地中国へと詩人としての志を広げました。
私たちは克己と同じ龍門の地に彼の縁者として生を享けた者たち(+その配偶者)です。
私たちは、今、この龍門の地、克己生家の扇屋跡地のすぐとなりに池田克己記念館が開設された事実を驚きと喜びをもって迎えています。
私たちは、正直申して克己の詩を愛読した者たちではありません。
しかし彼が詩への強い志と中華の文化への憧れをもって、日本が中国への侵略 を進める時代に、上海に移り住んだ事は幼ないころから親たちから強い い印象をもって聞かされてきました。
このたび克己記念館によって池田克己詩集の再版が企画されている事を知りました。克己は上海の地で、日中の文人との文学的交流と詩作に打ちこみながら、故郷龍門への強い思いを決して失う事はありませんでした。
そして敗戦を迎え、中国でしか得られなかった成果の多くを失いながら 、辛うじて命ながらえて吉野龍門に帰ってきました。
克己が文学的に最も旺盛だった時代は、日本がその歴史始まって以来の大失敗をおかした屈辱の時代とぴったり重なります。誰もが自らを語りたがらぬその時代を、克己は詩人という一人の表現者として通過してゆきました。一夜にして価値が反転し、NHK連ドラの「あんぱん」に描かれているように、人々はなんのてらいもなく、あるいは呆然自失しつつ、あるいは屈辱と怒りに燃えながら、敗北に直面させられた時代です。
克己は、そんな時代に、旺盛な創作意欲に駆られながら、一人の詩人として、日常の便々たる世界と日常の彼方に垣間見える世界に等分の想いをはせながら、かかわっていったと思います。
今の時代はロシアやイスラエルなどの強者が弱者を侵略し、トランプのような独裁者が、かつての 「民(たみ)の国」=「合衆国」を支配する、まさに克己が中国に渡航した時代の再来です。
克己の詩作の再刊は、今のまさにこの時代にとっても意義のあることだと感じています。
克己は、敗北を「抱きしめる」(J.ダウアー)ように迎えた日本人の一人だったのでしょう。戦後の混乱の最中、次々と詩作の表現空間、詩作表現の自由な場を創りだすことに奔走しながら僅か40歳で早逝しました。私達がまだほんの子供だったころでした。
吉野龍門が生んだ詩人池田克己顕彰会について
このプロジェクトは、奈良県吉野町にて活動するNPO法人「吉野龍門が生んだ詩人 池田克己顕彰会」が主催・運営しています。
池田克己は、龍門村(現在の吉野町)に生まれ、早くから詩と美術に傾倒しました。
戦中・戦後の詩壇に大きな足跡を残しながらも、地元ではその存在が長く知られずにいました。
顕彰会は、池田克己の詩業と人生の価値を掘り起こし、
記録・展示・詩集制作・朗読会などを通じて、次世代へ伝える活動を行っています。
2025年には、生家跡の向かいに詩人池田克己龍門記念館を開設。
現在は、来館者の受け入れや資料展示のほか、学校や地域との連携にも力を入れています。
▶記念館公式サイト
▶私たちの活動は奈良新聞(2025年6月29日付)にも取り上げられました