独裁政権が昨年12月に崩壊したシリア。
反体制派が率いる暫定政府が政権運営を担っていますが、地域によっては不安定な状況が続いています。
特にJIM-NETが支援を続けている北東部では、トルコの支援を受けるシリア国民軍(SNA)による攻撃が激化し、人々は不安と恐怖を抱えています。
また、混乱に乗じた虐殺や迫害を恐れた少数民族やクルド人など多くの避難民が押し寄せ、学校やモスク、市営スタジアムが避難所となっています。
現地パートナーのクルド赤新月社(KRC)と協働して、幼児用ミルクと仮設診療所への必要な医薬品を届けます。
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ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
ストーリー
昨年11月13日~21日の間、アルビル事務所スタッフのリームがシリア北東部を視察し、現地パートナー団体であるクルド赤新月社(KRC)と支援対象地域を視察しました。
この地域は、トルコによる占領と攻撃に晒され続けており、発電所、水道、石油供給所などが破壊されるなど、情勢は悪化の一途を辿っています。国際社会からの抑止力もなく、シリア領内の上空にはトルコ軍の無人偵察機が常に飛んでいます。民間人の車が爆撃され、死傷者が出ることが日常の一部となっています。
「誰も自分たちの味方をしてくれない中で、どうやって安心して生きていけるのだろうか」地元の人たちの口からは、そんな言葉が常に漏れています。また、このような状況下でも、昨年10月から激化したイスラエルによるレバノン攻撃で、シリア政権支配地域に避難できない避難民をこの地域のキャンプに受け入れてきました。
<キャンプの様子>
人々は貧困ライン以下で生活し、公務員の月給は僅か30USD程度、自営業でも100USDから150USD程度です。100USDでは10日間の生活ですら厳しく、物乞いをする人も珍しくありません。ガソリン価格は1ℓ=1USDを越え、公共の電気が使えるのは1日2-3時間程度で、トルコから発電所を攻撃された際は、1ヶ月間電気を使うことができませんでした。保健セクターでは、医療従事者が不足しており、医薬品も輸入に頼っているため高騰し、WHOやNGOからの支援も圧倒的に不足しています。
【アサド政権崩壊と暫定政権の発足】
先の見えない暗澹たる気持ちでリームがイラクに戻って束の間、シリア情勢が急変しました。
12月8日、アサド政権が崩壊し、50年以上続いた独裁政権に終止符が打たれました。
イラク北部アルビルでも反体制派の旗を掲げた車やバイクと共に独裁からの解放に喜ぶシリア人を多く見かけ、未来への希望を見出す人たちの声が溢れていました。
現在、旧反体制派のHTS(シャーム解放機構)率いる暫定政府が政権運営を担っています。外交面では、HTSの指導者のシャルア氏を中心に外交を活発化させ、対シリア制裁の解除に向けて動き出しており、外相や保健大臣も関係各国や国際機関との会談を重ね、物資や技術支援への協力要請を行っています。一方、内政面においては、国内多数派のイスラム教スンニ派のみならず、国内の多様な民族、宗教・宗派との融和を目指し、民主主義的な体制構築を訴えていますが、道筋は不透明なままです。
そんな中、2月後半に国民対話会議が開催され、各地域の代表や各宗教・宗派の代表者約600名が参加し、新しい憲法や国家機関の再構築などについて話し合われました。しかし、クルド人勢力組織のシリア民主軍(SDF)は招待されず、暫定政権が進める国民の融和の実現について疑問視する声も相次いでいます。
【新たな国内避難民と緊急支援】
喜びの声で溢れていたシリア人の声は、一ヶ月前と比べて少しずつトーンが下がり始めています。南部や首都の一部へのイスラエルからの空爆や侵攻、東部での過激派組織IS「イスラム国」の勢力再拡大の動き、北部や北東部おけるトルコ軍及びトルコの支援を受けるシリア国民軍(SNA)とアメリカが支援するクルド人勢力組織シリア民主軍(SDF)の激しい衝突など、情勢は総じて悪化していると報告を受けています。アメリカ軍の撤退も発表される中、読めない今後の情勢に、人々の不安は募るばかりです。
現在、KRCでは保健セクター、水や衛生セクターの緊急支援に取り組んでいますが、人の往来が激しく、KRCやその他の現地団体でさえも、対象人数の把握が困難な状況です。避難してきた人々は学校やモスクなどで寝泊まりしており、地域住人は、避難民を自宅に迎え入れるなどしています。
緊急措置として、市営スタジアムにテントを設置して人々を受け入れていますが、毛布や暖房器具や燃料などが不足しており、人々は寒さと不安の中で過ごしています。自治政府は、ラッカ周辺に国内避難民キャンプを新たに開設する予定ですが、混乱の中、キャンプ新設には至っていません。
シリア支援を担当するスタッフのリームは、このように語っています。
「昨年11月、私がシリア北東部に渡航した時、人々は心の平穏を忘れ、何年にも渡る戦争の疲労の蓄積が目に見えてわかりました。人々も町の様子も本当に疲れている、そう感じました。
イラクに戻って間もなく、アサド政権軍の抵抗もなく、HTSによるシリア各地の解放が始まりました。あまりにも急な展開に、何が起こっているのか情報に追いつくのが大変な日々でした。私たちは24時間寝ることもなく、テレビや電話から片時も離れずにその様子を見ていました。政権崩壊が伝えられた12月8日の朝は、夢の中にいるような信じられない瞬間でした。皆で喜びを分かち合い、シリアに戻る計画を立て始める人も多くいたけれど、その夢心地は僅か数日で途絶えました。
HTSがアレッポを開放した後、2日後にはシリア国民軍(SNA)によるシャハバ地域への攻撃が始まり、少数民族やクルド人は虐殺や迫害を恐れ、シャハバ地域やタル・リファート、更にはダマスカスや他の都市からも少数派の人々がハサカやラッカへと避難しました。トルコの占領を支持し、土地を奪い、命を脅かす同胞に絶望を感じています。かつて、シリアのために大きな犠牲を払いイスラム過激派組織IS(イスラム国)と闘ったクルド人部隊は、今シリアから見放されています。歴史や人種差別はまた繰り返されるのでしょうか。私はそれでも暴力もテロもない新しいシリアに生まれ変わることを願い続けるし、そして何より、情勢に翻弄された人々が明日を生きるために、この北東部の窮状のために何かしたい、と強く思っています。凍てつくような寒さが続くこの地域を、どうか支えてください。」
刻々と状況が変化する中で、現在パートナー団体のKRCと協議を重ね、シリア北東部への緊急支援の準備を進めています。
応援のほど、よろしくお願いいたします。
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口座名:日本イラク医療ネット
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