秋田の高校生がニューヨークで開催される「MIEF 探究と表現フィールドトリップ」に参加し、グローバルな視点や探究学習の経験を深めるプロジェクトです。大学進学率が低い秋田では探究機会が限られ、英語を使う場も少ないなど課題が山積み。そこで各自が個性豊かなテーマを探究し、ニューヨークの多様なフィードバックを通して学びを得ます。生徒たちは英語学習者や外国人観光客をつなぐ構想や「どうでもいいことquestion」など独自の探究を披露。多彩な視点を得て成長し、秋田へ波及させます。クラウドファンディングで渡航費を支援し、帰国後は報告会や実践を通じて地域に還元。高校生の挑戦が秋田の未来を拓く一歩となります!!
ストーリー
私たちのビジョン
今回私たちが秋田の皆さんと一緒に創りたいのは、 ニューヨークで行われる「MIEF 探究と表現フィールドトリップ」へ秋田の高校生を送るプロジェクトです。
私たちの取り組む課題
・大学進学率が低く、グローバルな視点が不足しやすい秋田県
文部科学省の2022年度学校基本調査(確報値)によると、秋田県の大学への進学率は39.6%と、全47都道府県中、最下位です(全国平均56.6%)。全国1位の東京都(76.8%)の約半分で、都市部との教育格差が激しいです。また、国際化を進めるAIU(国際教養大学)は秋田市にあるものの、全入学者における秋田県内高校からの進学者は15%程度となっていて、グローバルな視点に目を向ける機会が秋田県内の高校生には残念ながら少ないのが現状です。
・探究学習を行う機会の少なさ
探究学習とは2022年から日本の高校でも始まった、自分で問いを立てて深めたいことを探究していく学習方法のことです。インターナショナルバカロレア(通称IB)のカリキュラムにも組み込まれていたものがベースになっています。現状、日本では1人の教員が複数人の生徒を指導しなくてはならないため、なかなか探究を深めていくことが難しい、また生徒の行なっている探究が自分の専門外だった時に指導できないなどの課題があります。自分自身で問いを立て深めるという行為の習得も難易度が高く、良いテーマに取り組んでいても困難で探究をやめてしまうことも少なくありません。
なぜこの課題に取り組むか
なぜ秋田の高校生がこのプログラムに参加すべきか理解するためには、今年のMIEF 探究と表現フィールドトリップ参加者、そしてこれまでの参加者とその保護者、支援者の声を聞いてください。
小熊ユキナさん
こんにちは!
秋田南高校2年の小熊ユキナです。このたび「探究と表現フィールドトリップ in NY」に参加させていただきます。
「探究と表現」とは、自分で立てた問いに対して答えを見つける活動のことで、そのテーマは実に多岐にわたります。他者との探究を共有し合うことで学び合い、互いの成長にもつながる貴重な機会です。今回の「探究と表現フィールドトリップ in NY」では、日本各地から参加する高校生が、ニューヨークでそれぞれの探究を発表し、多様な視点からのフィードバックを得ます。そして、その学びを自分の地域に還元していくことを目指しています。
私が取り組んでいる探究テーマは「年齢や立場など、多様な違いを超えてつながり合い、その違いを認め合う方法を探る」というものです。先生と生徒、日本人と外国人など、性質の違いに目が向きすぎて、一人ひとりの個性が見えにくくなってしまうのではないか、という問題意識がきっかけでした。
そこで私が考えたのが、「どうでもいいことquestion」というコミュニケーション方法です。たとえば「みかんの皮をどう剥くか」といった、専門知識を必要とせず、誰もが日常的に体験していることを問いかけ、それぞれの考えを発表してもらいます。実際に家族に試してみたところ、全員が違う意見を持ち、互いの考えを面白がって聞き合う様子がとても印象的でした。
旅の目標は、このコミュニケーション方法を通じて文化や人種の垣根を超えて「つながり」を生み出すこと、さらにその過程で見つかった改善点を今後の探究活動に活かしていくことです。「どうでもいいことquestion」には正解がなく、気軽に自分の考えを話せるため、新たな視点を獲得できますし、自分の意見を受け入れてもらう経験を積むことにもつながります。これは、自分の感情を抑えがちな方や、劣等感を抱える方が自信を持つきっかけになるのではないかと考えています。
また、この相互理解の促進が、マイノリティーへの偏見や差別の軽減、そして生きづらさを感じている人へのポジティブな支援につながるのではないかと思います。とくに自殺率が高い秋田県では、その現状に風穴を開けるような手立てになればと願っています。帰国後は報告会などの場を設け、「どうでもいいことquestion」を広めて浸透させるとともに、多くの方の意見を取り入れながら新しいお題を生み出していきたいです。
一人の高校生として、世界を大きく変えることはできませんが、小さなことでも誰かの役に立ちたいという思いが、今回のフィールドトリップへの参加を決意した理由です。ニューヨークでは、さまざまな意見に触れて自身の探究をさらに深め、秋田を変えようと本気で考えている高校生仲間や地域の方々に、現地で得た学びを思う存分伝えたいと思っています。このチャレンジが、誰かの心を少しでも前向きにするきっかけになれるよう、精いっぱい取り組んでまいります。
渡部真生さん
はじめまして。聖霊学園高等学校2年の渡部真生と申します。これから、私が取り組んでいる秋田の活性化プロジェクトについてご紹介します。
私には解決したい課題が3つあります。
1つ目は、英語を学んでいる人が英語を使う機会を得にくいこと。
2つ目は、田舎体験を希望して来日する外国人が、どう行動すればよいか分からないということ。
3つ目は、外国人を受け入れたい農家民宿が、英語でのコミュニケーションに難しさを感じていることです。
実際に2軒の農家民宿経営者にインタビューをしたところ、すでに外国人を受け入れているにもかかわらず、英語での宣伝やコミュニケーションが難しいと悩まれていました。これは言語の壁が集客や質の高いサービスを提供する上で障害になっていると感じています。そこで、この3者をつなぐ形で、英語を学んでいる人と外国人観光客を対象にした「英語キャンプ」を秋田の農家民宿で開催したいと考えました。
ご存じのとおり、インバウンド消費は半導体と並ぶ大きな市場であり、日本国内の外国人宿泊者数も急速に伸びています。しかし、秋田を訪れている外国人はほんの一部で、それは秋田に魅力がないのではなく、情報発信の仕方に課題があるのだと思います。秋田の魅力を効果的に、そして積極的に発信していけば、この問題は必ず解決できるはずです。
さらに、クラウドファンディングで資金を募る理由についてお話しします。ニューヨークへ渡航するには多額の費用が必要です。そのため、多くの方々に私のプロジェクトを知っていただき、共感していただくことで資金を集めたいと考えています。秋田の活性化に向けて実現したい構想を前進させるためにも、多くの方のご支援をいただきたいのです。また、クラウドファンディングを通じてプロジェクトの参加者や支援者とつながり、地域を巻き込んだ活動を広げていくことも期待しています。
このように、英語を学ぶ人・外国人観光客・農家民宿の三者をつなぐ英語キャンプによって秋田を盛り上げたいというのが、私のプロジェクトです。ぜひ応援をよろしくお願いいたします。
過去参加高校生
「自分の内に秘めていた探究が、たくさんの発表やディスカッションの機会を通じて、進化し外に開いていきました。初めての海外や探究をする仲間との出会いはとても刺激的で、内気だった私が挑戦する勇気をもつようになったことに成長を感じています。学校の外に飛び出したことで得られたこの経験は間違いなく一生の財産です。」
秋田県内サポーター
「秋田県から高校生をNYに送り出すことで、IB(国際バカロレア)で行われている教師目線かつ学習者目線の常に変わり続ける探究型の学び方のフレームを実践的に学ぶことができます。探究と表現は言葉にするのは簡単ですが実際には地政学、社会学、心理学、歴史学など幅広い分野の研究者、地域のプレイヤー、アーティストなど、様々な人材が関わりだすことでよりよい探究の改善や批評が生まれていきます。ぜひ秋田県内の高校生に体験してもらいつつ、今後もそのサイクルが継続していければと願っています。」
佐竹宏平 株式会社Root-N 代表 / 加賀サポーター
「探究は、自分の人生をかけて行なっていく営みです。テーマが変わったとしても、探究という営みは変わりません。自分の人生を主体的に生き、またその探究を通して仲間が増えるということは、人生において本当に豊かなことだと思います。地方には情報も機会もないとよく耳にしますが、今回の機会はまさに目の前に、世界へ飛び出すチャンスが現れているのだと思います。世界は広いです。自分の探究で広い世界に飛び出してみてください。」
Bunkasai(旧:Harumatsuri)参加学生 保護者
「部活と学校生活が中心の普通の高校生でしたが、渡航後は、大人の意見に対しても多面的に考えていけるようになったのか、そのまま受け入れるのではなく、一旦考えて、きちんと意見ができるようになりました。それぞれの視点で探究をする大人、仲間と出会えたこと、学べたことは、娘がこれからどこの地域でどのような勉強、仕事、探究をするにあたっても、素晴らしい財産になったと思っています」
「MIEF 探究と表現フィールドトリップ」では自分の探究を深め、どのように表現するかということを主軸としたプログラムです。日本各地から参加する同世代の探究を知り、表現の手法あふれるニューヨークで活動することを経て、それぞれの参加者が自分の探究を深めます。本プログラムはIB校であるUNIS(United nation international school)で50年教鞭をとった日本語教師・津田和男先生の実施する探究と表現カリキュラムをベースにコンテンツが用意されています。
このような素晴らしい機会を、秋田県内の高校生にもぜひ体験してほしいと考え2025年度の渡航費40万円をクラウドファンディングで賄おうという企画です。
本プロジェクトのように、秋田県内の高校生が海外に一歩を踏み出し、探究を広げていく機会はとても貴重なものです。
MIEFで行われてきた探究と表現ワークショップとは
参加者の一人である私、小熊ユミナが参加してきたレポートを下記に記載します。
一昨年(2023年)の様子
日本各地(秋田、山形、東京、栃木、神奈川、兵庫、広島、島根)の高校生10名が参加しました。
小熊ユミナ
秋田県秋田市出身、現在大学1年生
私は「女子トイレの混雑をサインデザインで解決する」という探究をしていました。休み時間の度に混雑する母校の女子トイレをフィールドに、混雑の原因を追究しデザインの力でこの問題を解決するというものです。
渡米時にはまだこういったデザインのモノを作れば良いのではないかという提案と予想をしていただけでした。実際にニューヨークに行き、日本語や英語で探究内容をプレゼンをしてフィードバックをいただき、宿に帰ってからみんなで振り返りをするという流れを通じてこのままではいけない!実際に形にして混雑を解決したい!と強く思うようになりました。そして秋田に戻り早速プロトタイプを作り、学校の先生方や友人の手も借りて検証を重ねていきました。
私の探究は最終的には学校のトイレの扉に付いている鍵穴に行き着く、規模だけ見るととても小さな探究でした。最初は自分の探究に自信を持てず他のメンバーの発表を聞いて探究の内容や規模を比べてしまうこともありました。しかしニューヨークで様々な経験をするにつれ、自分の探究に自信を持てるようになり、最後には胸を張って発表できるようになりました。ニューヨークで日本とは違う道路標識を見たり、英語表記しかなく使い方がわからない洗濯機などを前にして、改めてサインデザインやユニバーサルデザインの重要性を認識しました。不便を便利に、快適にするデザインづくりに携わりたいと思うと同時に、ワクワク感を提供する不便なデザインもあっても良いのではないかと考えるようになりました。
2023年7月には山形県米沢市で探究と表現のワークショップが開かれ、私達Bunkasai(旧:Harumatsuri)参加メンバーも参加しました。これは自分の探究をカリキュラムにして自分自身の探究の見通しを立てると同時に、他の人も自分の探究に参加しやすくするというプログラムでした。トイレの混雑を解決するという探究は、高校卒業で一区切りがつくと考え、新しいテーマで今後の探究についてじっくりと考えました。そこでたくさんの方と出会い、探究を語るうちに「五感」に興味を持つようになりました。
現在は大学に進学し、デザインと建築を学んでいます。広義のデザインで人々の生活を鮮やかに彩ることができる人材になれるよう、知識と技術を蓄えています。
ニューヨークでの活動の様子
タウンゼント・ハリス高校訪問
ジェスチャーも交えながら英語で自分の探究をプレゼン、質疑応答をしました。
ここで出会った現地の高校生の子と今でもダイレクトメッセージで会話をしています!
Tech for peace symposium 2023
東京大学の渡邉英徳教授をはじめとする方々のプレゼンやディスカッションの後、高校生も探究を発表しました。その後はピザを片手にラウンドテーブルディスカッション!
Bunkasai(旧:Harumatsuri)2023
ニューヨークで日本文化に触れて心から楽しんでいる現地の生徒を見て、遠く離れた日本の文化がこんなにも受け入れられているのだということを知り嬉しかったです。エネルギーをもらいました!
番外編
グループに分かれて食材の買い出しとクッキングをしました。特大ステーキに山形の芋煮、広島焼き(風)... 仲間との絆が深まった夜でした!
ニューヨークの景色
寄付金の使い道
集まった資金は、本プロジェクト遂行にあたり、渡航費および研究開発のために利用させて頂きます。
■目的
ニューヨークで行われる「NECTJ Bunkasai(旧:Harumatsuri)」へ秋田の高校生を送り届けること。そこでの学びを秋田県内の高校生、大学生、大人に話をすることで秋田県内の地域全体により学びを深めていくことを目指します。
※「NECTJ Bunkasai(旧:Harumatsuri)」は、NECTJ(Northeast Council of Teachers of Japanese)が1994年から毎年開催している米国北東部在住の⽇本語学習者のための祭典です。4⽉11⽇にアメリカ・ニューヨークにある国連国際学校(UNIS)にて開催されます。Bunkasai(旧:Harumatsuri)では、⽇本語のパフォーマンス、⽂化ブース、各種コンテスト、タレントショーが企画され、北⽶で⽇本語を学ぶ中⾼校⽣を中⼼に400名以上の⽣徒が、⾃⾝の探究学習の成果を発表し、交流を拡げていきます。
■サブ目的
①今回の「NECTJ Bunkasai(旧:Harumatsuri)」に参加する秋田県内の高校生が、来年度以降も県内の高校生を送るクラウドファンディングを地域の大人の協力を得ながら継続的に行っていくこと。
②「NECTJ Bunkasai(旧:Harumatsuri)」で行われている探究と表現ワークショップを2025年内に、秋田県五城目町でも津田先生によるリモート演習などを経て、実際に地域の大人や高校生達と一緒に行ってみること。
スケジュール
2025年
1月初旬:本プロジェクトスタート、クラファン立ち上げ
2月初旬:成田空港からNYへUNISでのプログラム
3月下旬:秋田市で探究と表現ワークショップinNY報告会を開催(予定)
現状
UNIS津田先生との協力関係ができており、国内でも米沢や加賀、東京などですでに高校生を巻き込んだワークショップが開催されています。今後は各地域が自立的に学びを広げるため、各地域のフィールドを高校生それぞれが探究するスタディツアーを開催するなど企画が進んでいます。
詳しい内容は下記を御覧ください。