ストーリー
こんにちは。事務局長の新石正治です。
このたび私たちはクラウドファンディング「虹色の未来を描こう」をはじめます。
集まったご寄付は主にミャンマーのヤンゴン校外の村の子どもたちの学習環境整備に活用する計画です。
目標金額は50万円です(キャンペーン全体では100万円を目指しています)。
ミャンマーは混乱を極めています。国が壊れかかっています。正直なところ、現場を抱える団体として率直な情報発信がむずしい状況にあります。しかし、クラファンだからこそ伝えられることがあると感じています(なぜならクラファンは期間限定の寄付のお祭りだから!)。
現実の困難を訴えるだけではなく「またいつかミャンマーに行こう!」と思ってくれる人が少しでも増えるような情報発信もしていきたいです。
短いあいだですが、応援のほどよろしくおねがいします!
■ 子どもたちが安心して学べる場所を取り戻したい
ミャンマーの内戦は混迷を深め、国内避難民は350万人といわれています。支援ニーズが高まる一方、国際社会から孤立し、支援は集まらず、NGOや国際機関への移動許可は下りません。治安はさらに悪化し、われわれのミャンマー事業の原点であるラカイン州北部は激戦地となり活動できなくなりました。
そんななか、ヤンゴン郊外の一部の村落支援の許可が取れました。奇跡です。このチャンスを逃したくありません。最大都市ヤンゴンの郊外では、紛争地から逃れてきた家族が集まり、子どもたちを親類の家や寺院、養護施設、孤児院に預けています。経済状況の悪化で村はボロボロです。安全な学びの場を確保したい。校舎の修繕、給水設備の修理、トイレ設置、衛生教育、そして図書とおもちゃの寄贈―― 子どもたちが虹色の未来を描ける空間を守りたいと思います。
■ 現在のミャンマーでNGOとして活動することのむずかしさ
いまミャンマーはどうなっているのか?
2021年のクーデター以降、紛争が激化の一途をたどっています。12月の国際救援委員会(IRC)による発表では、最悪の人道危機に直面する国として、ミャンマーは、スーダン、パレスチナに次いで3番目に上げられています。
人道支援のニーズが世界有数に高いのはあきらかです。しかし、国際機関やNGOの活動は制限されています。政治的分断や紛争を抱えた国での活動とはこれほど難しいことなのかと痛感しています。大きくいうと以下の2点がポイントです。
・そもそも危険で近づけない
・政治的な分断や対立に巻き込まれる(中立性が無化される)
一番目はそのままです。危険だから移動許可も活動許可も出なくなります。そもそも近づくことすら危うくなります。
二番目はこういうことです。NGOが活動する地域は開発が遅れている少数民族地域が多いのですが、今その少数民族地域こそが紛争の中心地となっています。そのため、これまでは問題なく活動できていたのに、油断してそのまま支援活動を続けていると、少数民族武装グループの支配地域で支援を行なっていると解釈され「おまえたちのようなやつらがいるから紛争が終わらない!」ということになって当局による処罰の対象になってしまいます。現に、職員が拘束されたり、団体登録が抹消されたりしたNGOがあります。NGOや国際機関は本来中立であるはずですが、苛烈な分断と対立に巻き込まれて、両陣営から中立性を疑われ、さまざまなリスクを抱えざるを得ません。ほとんどの団体や組織はロープロファイルで何とか活動している現状です。ねばり強さがかつてなく求められています。
ちなみに、わたしたちのミャンマー事業の原点でもあり、1994年の事務所設立以来活動を継続してきたラカイン州北部マウンドーは7月以降戦闘が激化し、職員は各地に避難し、事務所は砲撃を受け、誰も近づけない状況です。
(7月末には職員は避難し、その後事務所は砲撃に合った)
■ それでも、やるぞ!
治安が比較的安定かつ対立状況がそれほど激しくない場所では活動ができる余地があります。しかし、そうした場所は非常に限られており、あやういバランスのうえに成り立っています。いつどうなるかわかりません。私たちは幸いなことに、先ごろようやく中央乾燥地域の一部地域で、活動許可を得ることができました(正式な許可を得るのに1年以上かかりました)。こちらは村落の給水事業です。人々の生活に必要な深井戸の修繕を中心に行なっています。(もちろん、こちらの活動もファンドレイジングを継続してがんばります!)
(元BAJスタッフが立ち上げた深井戸修繕チーム)
(10月末ごろ実施した水管理者向けの研修)
そして、水供給事業の準備を進める流れのなかで、ヤンゴン校外の村落での活動許可が(口頭ですが)得られることになりました。いろいろな関係者の尽力や微妙なバランスの上で成り立つ活動だと感じています。
(継続中の図書とおもちゃのミニライブラリー寄贈)
今回、わたしたちが対象とするのはヤンゴン校外の6か村です。長引く紛争と混乱から経済状況が悪化しています。わたしたちはインフラ整備を長年得意としてきた団体なので、やはり調査で気になったのは、子どもたちの衛生環境に影響が大きい給水設備やトイレ、ゴミ捨場、校舎の老朽化などでした。一気に進めることはできません。今回のクラファンで集まった資金をもとに少しずつ実績を積み、改善していきたいと考えています。インフラだけではなく、長年継続している図書とおもちゃのミニライブラリー寄贈も同時に進めていきます。
●寄付金の使いみち(50万円の場合)(1か村)
・図書とおもちゃのミニライブラリー寄贈(18万円)
・トイレ改修(20万円)
・校舎修繕(12万円~)
(老朽化したトイレ)
(修繕の必要な校舎)
(屋根が壊れ風雨にさらされたままの図書保管庫)
■ 風にうたう ミャンマーのかがやき
ミャンマーの至るところで人々が困窮しています。わたしたちができることはほんの一部ですが、それでも、むずかしい状況だからこそ、わずかでも希望をつないでいくこと、日本とミャンマーの草の根の支援のネットワークを維持していくことは重要です。でなければ、せっかくこれまで築いてきた日本とミャンマーの交流の歴史自体がなくなってしまいます。それくらいの危機にあると感じています。
そして、そうした民間交流の絆をつなぎとめるためには、紛争や避難民といった現実以外にも、ミャンマーのことをもっと広く知ってもらうことが大事ではないかと思うようになりました。「大変だ!」だけではないミャンマーの魅力を伝えていく必要性です。
そこで、本クラウドファンディングでは、「風にうたう ミャンマーのかがやき」と題して、さまざまな人たちのミャンマーにまつわる、大きくいうことではないけれど、個人的で、ささやかな記憶の断片を集めて発信していきたいと考えています。
混迷を深めるミャンマー、でもいつかミャンマーに行きたい。そう思ってくれる人たちがちょっとでも増えたらいいなという願いを込めて行う発信です。
あのとき目にした風景、人々のくらし、忘れられない料理や食べ物、ふと思い出す何気ない記憶の一コマ。今こそ、ミャンマーのかがやきを思い出そう。そしてまたいつかミャンマーに行こう。そのときまでミャンマーを忘れないために。――どうぞこちらもご期待ください。
それでは、短いあいだですが、わたしたちの「虹色の未来を描く」冒険にお付き合いいただけると嬉しいです。どうぞよろしくおねがいします!