2024年8月5日はバングラデシュにとって歴史的な1日となりました。
コロナ後、国内での経済成長が鈍化し、若年層を中心に失業率も高まる中、政府の公務員採用枠の30%を独立戦争志願兵の家族に割り当てることに端を発した学生デモが7月に開始。当初平和的だったこのデモに対し、政府はこれを武力で弾圧。300名を超える死者が出たことをきっかけにこのデモは現政権の打倒を目指す全国的な運動へと変貌を遂げ、8月5日15年以上の長期政権を握っていた政権はハシナ首相の国外逃亡という結末で幕を閉じました。
しかし、政権は打倒されたものの新政権の不在、民衆の暴徒化によってバングラデシュ国内の秩序は非常に不安定な状態に突入し、新たな混沌を生んでいます。
そんな混沌の中で、最も被害を受けているのが路上生活を送っている子どもたちです。無秩序となっている中、暴徒化している人々の暴力に巻き込まれたり、ケア活動の中断により、コロナ禍から続く違法ドラッグ利用や極度の貧困がさらに進行してしまう可能性も高まっています。
その中でvery50は今まで高校生・大学生プログラムの活動地として深い関係のあるバングラデシュへの緊急支援として、長年バングラデシュ現地でのストリートチルドレン保護・教育を行っているNPO法人エクマットラ・ジャパンと協働し、今回の混沌とした状況下でのストリートチルドレンのサポートキャンペーンを立ち上げました。
ストーリー
バングラデシュで今起きていること
・暴動の発端
現在、ニュースでも多数取り上げられているように、南アジアの国バングラデシュは激動の瞬間を迎えています。
バングラデシュでは15年以上に及ぶ長期政権のもと、コロナ前までは急激な経済成長を遂げ、アジアの最貧国と言われていた時代がはるか昔の過去のことかのような勢いでした。しかし、コロナ後にはこの経済成長が鈍化、高いインフレーションや特に若年層での失業率や教育機会の欠如が目立ち始めていました。
そんな折に、独立戦争志願兵の子孫に公務員枠の30%を割り当てるというクォーター制の廃止を高裁が違憲と判決したことをきっかけに7月上旬からダッカ大学の学生を中心に採用枠の固定は差別的であり、政権を担うアワミ連盟の支持者層に対する優遇措置であるとして平和的なデモ運動が始まりました。このデモ活動は徐々に全国に広がり、全国規模での交通封鎖などの抗議運動につながり、これを治安部隊や警察などが武力で弾圧。7月中旬には300人以上の死者を出す事態となり、抗議運動はさらに過激になっていきました。
ことの発端となったクォーター制に関しては7月中旬に最高裁によりその採用枠を大幅に減らすという決定がされ、抗議運動に対する措置としてのインターネットの遮断や外出禁止も解除され、一旦の幕引きとなったかと思われましたが、抗議運動における死者が出たことが火に油を注ぎ、運動は元の要求から拡大し、現政権の打倒を目指すものとして拡大を続けていきました。
8月に入っても抗議活動は続き、デモ隊と警察の衝突により多数の死者を出す結果となりましたが、その度にデモ隊の勢いは増していき、その結果8月5日にハシナ首相は家族と共に国外へ逃亡。デモ隊が首相官邸に突入し、15年にも及ぶハシナ政権は終焉を迎えました。
・無秩序、不安定なバングラデシュの今
ハシナ政権が打倒されたことで各地では「第2の独立」として喜びの声が大きく上がっている一方で、未だ新政権樹立の目途は立っておらず、不安定な状態が続いています。一部の暴徒化した人々は過激化し、前政権側の人間に対しての暴力・破壊行為や警察署をはじめとした政府施設を破壊し、火をつけるなど暴力の過激化も歯止めがかからなくなってしまっています。特にこれまで政権を担ってきたアワミ連盟の中で融和政策がとられていたヒンドゥー教徒や少数民族に対する差別が広がり、攻撃対象になるなどデモを指揮した学生団体もコントロールできないほど一部の暴徒化・過激化が進んでおり、不平等を理由に始まったデモが皮肉にも、不平等を拡大する形となってしまっています。
学生団体は新政権への要求などを軍と野党と共に協議をし、8月8日には暫定政権が発足しましたが、この暫定政権運営も今後スムーズにいくかは全く読めない状況であり、これだけの多くの課題を解決するのに時間がかかるものと見込まれ、今後も無秩序で不安定な状態が続いてしまう可能性が非常に高くなっているのが現状です。
・混沌の中で影響を受けるストリートチルドレン
このような無秩序、不安定な状態が続く中で、先にも述べた様に少数派であるヒンドゥー教徒や少数民族は過激派から弾圧の対象となっていますが、それ以上に深刻な状況下にあるのが、これまで路上生活を強いられてきたストリートチルドレンです。過激化する暴力の中で、多くのストリートチルドレンが暴動に巻き込まれて命を落したり、銃撃の被害者となり深刻な大怪我を負ったりと、身体的なダメージはもちろんのこと、目の前で多くの人間が命を落とす実情を目の当たりにした子どもたちの精神状態への甚大な影響も危惧されています。また、こうした直接的な被害に留まらず、この情勢下で子どもたちの生活する場所が失われてしったりと、最も脆弱な環境下で生きるストリートチルドレンの子どもたちが長期的にも大きな影響を受けるのは必至です。
コロナ禍で極度の貧困や親の死去などで大きく悪化してしまったストリートチルドレンの子どもたちのPTSDなどの発症や、それを誤魔化すための違法ドラッグの利用などに対してここ最近進められてきたケア活動も全面的にストップしてしまい、彼ら彼女らは精神的にも身体的にも非常に危険な状態にあります。
very50が出来ること
・very50にとってのバングラデシュ
バングラデシュはこれまで数多くの高校生~社会人がvery50のプログラムを通じて訪問してきた場所であり、スタッフ自身も何度も足を運び、現地のパートナー団体、現地の友人たちと関係を深めていった非常に大事な国です。
そのため、バングラデシュのこのような状況を受けて、very50はバングラデシュのために最も脆弱な環境下にあるストリートチルドレンの保護、及び支援活動のために緊急支援キャンペーンを立ち上げ、現地のストリートチルドレンがこの不安定で無秩序な状態の中でも希望をもって生きられるために支援を実施します。
・協力団体NPO法人エクマットラ・ジャパン
very50は2008年の創業以来長年にわたって、バングラデシュで活動をするNPO法人エクマットラ・ジャパンと協働を続けてきました。これはエクマットラがただストリートチルドレンを保護する団体だからではなく、過去に様々な苦しい経験をしたストリートチルドレンたちがそれを乗り越え、「心のエリート」としてバングラデシュ社会の次世代のリーダーになっていくことを目指す教育団体の側面も持っているからであり、very50のMissionである「自立した優しい挑戦者」と非常に重なる想いをもって活動してるからです。
直近では、2022年に採択されたトヨタ財団の「社会的保護を受けられない子どもたちの心理的負荷に対するケア活動に関する調査」において協働し、日本で行われているPTSDを抱えた子どもたちや児童養護施設に通う子どもたちへのケアをバングラデシュの路上生活をするストリートチルドレンのケア活動に活用するプロジェクトを実施している最中でした。
このように、エクマットラは数あるvery50のパートナー団体の中でも、最も理念的に共鳴しており、その活動を長年にわたってお互いに支え続けている最重要パートナーの中の1つであり、今回のバングラデシュでの出来事を受けて、バングラデシュの状況の悲惨さ、不安定さ、ストリートチルドレンの状況を報告してくれたと共に、very50と共に解決したいと申し出てくれた団体です。very50としても、「自立した優しい挑戦者を増やして世界をもっとオモシロク」というMissionに基づき、自らが自立した優しい挑戦者の1つとして、同じ理念を掲げる団体と共にこの困難な状況下のストリートチルドレンの問題に尽力したいと考えています。
団体紹介
エクマットラは2003年、当時ダッカ大学の学生だった設立メンバーを中心に、バングラデシュにおける社会的な格差、不正、貧困、自然災害、資本主義への盲目的な傾倒の悪影響を受ける路上の子ども達を支援できないかという思いのもと結成されました。最初は大学構内にいたストリートチルドレンに対して青空教室を始め、青空教室を通じて継続的に子ども達と交流することによって、路上で暮らすということは貧しく生活が困難というだけではなく、それ以上に売春や麻薬密売などの違法な仕事やその手助け、また市場での荷物運びやリキシャ引きなどの重労働、物乞いや紙くず拾いなどの尊厳を傷つけられるような仕事の中で、基本的な人権を奪われながら多くの危険な状況に曝されることだということがわかり、そのようなストリートチルドレンの生い立ち、悲しみや苦しみ、将来への不安や心情を理解するために、長い時間をかけて向き合ってきた団体です。青空教室では基礎的な読み書きや計算といった識字教育のみにとどまらず、一般家庭で親が子に教えるような挨拶や道徳心、保健・衛生教育など社会生活に必要なライフスキルの教育を、歌や絵や遊び、踊りといった子どもたちが楽しめる情操教育を通じて行い、その活動をより長期的に、かつ本質的に行うために、2018年にはエクマットラアカデミーをダッカ郊外に開校し、現在は60人を越える子ども達と一緒に暮らしながらバングラデシュの未来を担う「心のエリート」を目指して教育活動を展開すると同時に、今なお路上で生活する子どもたちに対しても、その現状を追いかけ、本当に必要な支援を模索、実施しています。
・今出来る支援とは?
今回の緊急支援キャンペーンでは、NPO法人エクマットラ・ジャパンと協働し、以下の活動に皆様から頂いた支援を使わせていただこうと考えています。
➀不安定な状況のバングラデシュで生きるストリートチルドレンの保護活動
②新たなバングラデシュの社会を担う「自立した優しい挑戦者」育成のための教育活動
③日本国内におけるバングラデシュの現状やストリートチルドレンの状況を伝えるための広報・イベント活動
➀は非常に難しい環境にいる子どもたちの救出、支援、保護という目の前の支援を目的としています。具体的には身体的・精神的ダメージを負った子どもたちにとって必要な医療支援、カウンセリングを通じた精神衛生への支援、保護を必要とする子どもたちに対するエクマットラアカデミーや他団体へのレスキュー活動、子どもたちが経済的に自立できる仕組みづくりを計画しています。
②はそのような保護された子どもたちが今後のバングラデシュを担っていけるという将来に希望をもってもらうために非常に重要な活動と考えています。特にパートナー団体が運営するエクマットラアカデミーで新たに保護される子どもたちに加え、現在も当該施設で生活する子どもたちに対して、今回の情勢を目の当たりにしたことによる精神負荷へのサポートを行いつつ、より良い国づくりに寄与できる「自立した優しい挑戦者」を育成する教育活動の継続を行っていきます。
そのため、今回は➀に留まらず、②の教育活動を止めないというところまでを支援内容に含んでいます。(頂いた寄付の90%以上を①と②の活動に利用します。)
支援のお願い
いま、日本に伝わってくる情報の中には、バングラデシュの民衆が長期政権から自由を勝ち取った、新たな政権が樹立されバングラデシュが生まれ変わるというマクロな側面が多いように感じます。
しかし、現場では新政権の不在、暴徒化する過激派による暴力によっていまだかつてないほどの混沌が訪れているのが現状です。そしてその混沌の中で最も被害を被るのは、脆弱な環境下で生活を送らざるを得ない人々であり、それがストリートチルドレンの子どもたちです。
ぜひこのキャンペーンの存在を知ってバングラデシュの現状を認識していただくと共に、今も非常に不安定な環境下で必死に今を生きるストリートチルドレンの現状に思いを馳せ、ご支援を頂けると嬉しいです。
※very50は認定NPO法人のため、今回のキャンペーンでいただきました寄付は税控除の対象となります。詳細の条件などに関しましては以下のページよりご確認ください。