こどもに法的支援を届けたい②
2025/1/17 18:43

もっと早くに、こどもと親が法的支援につながっていたらと思うことがあります。
例えば、Bさんのケースです(プライバシー保護のため一部事案を修正しています。)
Bさん(高校2年生女子)は、父親と弟(小学校1年生)との3人暮らしです。
父親は自動車の部品に使われるボルトの加工をする小さな工場を個人経営しています。
朝から晩まで、土日祝日も工場に出ている状態で、ほとんど家にいません。
母親は、以前勤務していた会社でのパワハラが原因でうつ病となり、現在は自宅で療養しています。
家事をするのは難しい状況です。
そのため、Bさんが、高校に通いながら、家族の食事や洗濯などの家事全般を行っていました。
近所の居酒屋が月に2回お昼に開催している「こども食堂」で、弟と一緒に豚汁定食を食べるのが、唯一ほっとする時間でした。
そんなある日のことでした。
父親が脳梗塞で倒れ、亡くなったのです。
葬儀を終え、呆然とするBさん。1ヶ月後、遺品を整理するために、父の工場を訪れると、従業員だった男性がBさんに言いました。
「債権者からの督促がたくさん来ています。社長個人が債務者になっている未払金が1000万円以上あります。私の給料も2ヶ月分未払いが続いています。」
「私、学校辞めて働きます。お母さんと弟のためにも、私が頑張らないと。」Bさんは、担任に伝えました。
担任は、何かできることがあるはずだからとBさんを引き止めました。しかし、Bさんは翌日から学校を欠席し、連絡もつかなくなりました。年度末には除籍扱いになってしまいました。
Bさんのように生きづらさを抱えている方を対象に、法テラスでは、こども食堂を運営するNPO等と連携し、こども食堂で無料の法律相談を受けていただく取組を行っています。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/296454
(東京新聞デジタル2023年12月17日「離婚、借金…子ども食堂の「ついでに」無料で法律相談できる 法テラスが支える新たな取り組みとは」)
もし、Bさんが、こども食堂に来た際に、法テラスの無料法律相談を受けていたら、どのような支援につながっていたでしょうか。
Bさんは、父親が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続をとることで、相続放棄をすることができました。相続放棄をすれば父親の残した債務を支払う必要はありません。
相続放棄の手続を行わずに、父親の債務を相続してしまった場合でも、自己破産をすることで、債務の免責を受けることができました。
収入の状況によっては、生活保護を申請することもできたでしょう。
法的支援で、困難を抱えた子どもと親の生活を支えることができます。
いただいたご寄付は、福祉機関等との連携に基づく各種相談会のほか、困難を抱えたこどもと親に法的支援を届けるための活動等に使わせていただきます。
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