先天性心疾患で生まれてくる子どもは100人に1人。決して特別な存在ではないのですが、生まれつき心臓病の人たちの生活って、どうしているのかまったく知られていないのが現状です。心臓病で生まれた私たちが社会に出ていくためにはさまざまなハンディがあり、それを乗り越えていかなければなりません。安心して医療や福祉を受けることができる、切れ目や谷間のない社会保障制度をつくっていくために、生活実態アンケート報告冊子を作成して、国や自治体など社会全体に私たち心臓病児者の声を届けさせてください!

ストーリー

見た目にはわかりにくい、先天性の心臓病を持って生まれてきた人のことを知ってほしい

心臓に何らかの疾患を持って生まれてくる赤ちゃんの数は、およそ100人に一人、1000人に7〜8人といわれています。血管の位置が逆についていたり、通常4つある心臓の部屋が2つや3つしかなかったりなど、その病態はさまざま。生後1か月以内に手術することも少なくありません。医療の進歩によって、先天性の心臓病患者の約95%以上が成人を迎えられるようになったものの、見た目では疾患がわかりづらく、また先天性心疾患のことが社会的に広く知られていないため、当事者は日常生活で、また人生のさまざまな局面において困難を余儀なくされることがあります。

心臓病が根治するということなく、患者は生涯にわたって病気と向き合って生きていくことになります。そのためには医療とのつながりを継続させるための制度や、福祉制度による生活の保障が必要になってきます

■ 生活実態アンケート調査について

生活実態アンケート調査を前回実施したのは2018年6~9月でした。

成人期を迎えた成人先天性心疾患患者は約50 万人と言われるようになっていましたが、その存在は社会的に知られていませんでした。また、福祉や雇用支援などの社会保障制度は、これらの患者に適したものになっていません。 

見た目にはわかりにくい病気への理解を社会全体に広めていく必要があると考え、会員3774世帯を対象に、自記式質問紙でアンケートを実施しました。回答数は18歳未満が458人、18歳以上が490人と回収率は25.1%でした。 

このアンケートでは、0歳から60歳代まで幅広い年齢の患者の、ライフステージごとの生活状況やかかえる問題を知ることができました。

例えば、小児期に受けられていた福祉制度が、18歳や20歳になると対象から外れてしまうということ、就職ができても支援や配慮がないために就労継続が難しいことなど、多くの課題があることがわかりました。また、就労ができない患者の生活は親が支えていて、将来に対して不安を抱えながら生活を送っているという声が数多く届けられました。 

この結果を冊子にまとめ、行政、医療関係者へ広く配布しました。また、厚生労働省、文部科学省には調査結果を届けて私たちの願いを聞いてもらいました。さらに、日本小児循環器学会や日本成人先天性心疾患学会での発表を行ったり、研究者にも資料提供をしたりしてきました。

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新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、心臓病児者の医療、日常生活や教育、雇用などで大きな影響をおよぼしました。その中で、コロナ禍によって医療と福祉のぜい弱さが浮き彫りになり、自助(自己責任)や共助(助け合い)では解決できない問題が、数多く存在していると私たちは考えました。

そして、5年前の調査から患者と家族の生活はどのように変わってきているのかを調べるため、2023年に生活実態を調査するアンケートを実施しました。

前回と概ね同じ内容(コロナ関連の質問を追加しました)で、2023年4月から7月にかけて、3219世帯を対象に郵送とWebで実施し、回答数は18歳未満が276人、18歳以上が305人と回収率は18.0%でした。現在、回答結果を下記の方々にご協力をいただき鋭意分析中です。

・厚生労働科学研究費補助金小児慢性特定疾病児童等の自立支援に資する研究
(研究代表者:檜垣高史先生)

・厚生労働科学研究費補助先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上と生涯にわたるQOL 改善のための総合的研究
(研究代表者:大内秀雄先生)

■先天性心疾患患者の生活実態アンケート調査2023年に取り組む意義

聖路加国際病院循環器内科名誉顧問  丹羽公一郎さん

外科内科医療の進歩により多くの先天性心疾患患者の命が救われ、成人となってまいりました。
現在、日本では100万人の先天性心疾患患者がおり、そのうちの60万人は成人です。しかし、心臓手術は根治手術ではないため、成人期には後期合併症を伴い、何らかの生活上のハンディキャップを伴うことがあります。このため生涯にわたり病院に定期的に通院することが必要です。
医療、教育、就労、結婚出産育児、心理的問題など一般とは異なる困難な問題が少なくありません。医療面では、成人期先天性心疾患患者の診療施設、専門医は増えてきましたが、まだ十分ではありません。就労面でも、障害者認定されていても、適切な就労内容を把握していただけないことも少なくありません。病院の定期診療のため、多くの年休が使われてしまいます。妊娠出産は心臓に大きな負担がかかります。育児も家族のサポートが必要です。医療福祉制度の充実も必要です。
先天性心疾患は外から見えない内的障害で、患者は外面的には一般の方と変わりません。このため、一般の方々に直面している困難な問題を認識していただけていません。また、これら問題に関する実態がわかっていませんでした。
2018年に全国心臓病の子どもをまもる会により先天性心疾患患者の生活実態アンケート調査が行われています。その後5年が経過し、患者の生活実態も大きく変わってまいりました。このため、今回2023年生活実態アンケート調査が行われました。患者の抱えている問題について、多くの人たちに知ってもらい、医療、福祉、教育、就労、妊娠出産などの環境をよりよくしていく必要があることへの理解を広めるためのアンケートです。この結果を広く知って頂くことが大切です。web上の報告だけではなく、冊子体で多くの方、国、自治体の方々に目を通していただくことが必要です。

■ このプロジェクトで実現したいこと

前回の2018年に実施した同様のアンケート後からは、難病法・児童福祉法(小児慢性特定疾病対策)の改正や医療的ケア児支援法、循環器病対策基本法などの法改正があり、さらには、新型コロナウイルス感染症の感染拡大がありました。そうした制度と社会の動きが、患者・家族の生活にどのような影響を与えているのかを調査結果から読み取ることで、さらなる制度の改善につなげていきます。

そのために、調査結果をまとめた「報告書」を作成し、国や自治体に全国の会員の実態と当事者の声を届けていきます。

〔具体的には〕

・アンケートの集計結果により、医療、教育、就労の実態を明らかにして、社会に広めていくことで、心臓病児者と家族の抱える問題についての理解を広めていきます。

・現在の社会保障制度が、患者と家族の悩みや不安に対して充分に機能しているのか、その現状を明らかにしていきます。

・2018年に実施した同様の調査からの変化を調べることで、制度の動き、コロナ禍がどのような影響をあたえているのかを明らかにしていきます。

・各制度が、必要としている人に対して届くような基準や仕組みになっているのか、患者・家族の生活状況にもとづいて検証していきます。

・さらに、各制度が有効かつ有機的に機能して、生涯にわたり切れ目ないものになっているのか、横断的に検証していきます。

■ 全国心臓病の子どもを守る会

はじめまして、私たちは全国心臓病の子どもを守る会です。

全国心臓病の子ども守る会は1963年に創立され、医療や保険制度が不十分な時代に、心臓病児をもつ一人のお母さんの「わが子の手術ができない」という訴えがきっかけとなり、100人を超える心臓病児の親が集まって発足しました。悩みを打ち明け、相談し合える仲間づくりを大きな柱としながら、子どもたちが安心して医療を受けられるよう、国や自治体への要望活動にも取り組んできました。現在では全国44都道府県に49の支部があり、約3100家族の仲間がいます。


〇守る会は国への要望活動を毎年行っています

会が創設された1963年当時は、手術を受けるための医療費や、治療してくれる病院、手術に必要な血液集めなどが大きな課題でした。しかし、公的医療保険制度の整備、育成医療や更生医療、小児慢性特定疾病対策などの公的医療費助成制度の心疾患への適用などが、心臓病者とその家族の運動の積み重ねにより作られてきました。また、早くから障害者の対象に加えるように国に働きかけ、身体障害者手帳、特別障害者手当、障害年金などの福祉施策を受けられるようにもなりました。
近年では、難病法(「難病の患者に対する医療等に関する法律」2015年1月施行)の制定や、小児慢性特定疾病対策の改善などにより、心疾患患者への医療費助成を中心とした施策の拡充もありました。従来の障害者施策だけではなく、難病・慢性疾患患者としての制度に、心臓病児者も大きくかかわるようになりました。 

小児期の治療によって状態が改善された患者であっても、加齢にともない起こる障害(合併症、続発症)により、新たな身体的問題を生じるケースも少なくありません。子どもの心臓病が根治するということはなく、生涯にわたり医療とのつながりを継続させるための制度や、福祉制度による生活保障が必要です。治療にかかる医療費、学校での生活、進路の選択、就労、親の介護など、心疾患をかかえるがゆえに負っている社会的ハンディが存在しているからです。また、日々の体調変化や、見た目にわからない身体的なつらさは、個々の患者によって違っていて、その理解を得るのが難しいという問題もあります。 

心臓病児者と家族が安心して暮らせるよう、社会保障制度を改善していくために私たちができることは、生活実態アンケートからみえてきた患者の実態と当事者の声を、国や自治体あるいは社会全体に届けていくことが大事だと考えています。

〇年に一度、全国大会を開催しています。

★第61回全国大会 2023/10/29

「学ぶことは生きること」~親子で考える学びの場~

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授 副島賢和先生

10月29日(日)第61回全国大会は東京・新宿区の戸山サンライズの会場にて、初めてのハイブリッド開催となりました。子どもにとっても、大人にとっても「学ぶことは生きること」で、学びは勉強だけではなく、時には遊びであったり、仕事であったり、子育てであったり… 良かれと思っていることが、本当の意味でその子にとって良いことなのか、たぶんとても難しいことなのかもしれません… 子どもだけではなく大人同士のコミュニケーションにも当てはまるような、副島賢和先生のお人柄と、想いが伝わってくる、本当に素敵な講演会でした。 

~講演内容・一部抜粋~

『私は大人の勝負どころは、子どもがうまくいったときよりも、うまくいかなくて自分のことをダメだって思ってるときだと思います。子どもが自分はダメだなって思ったとき、自分で抱えきれないぐらいの出来事が起きたときは、それをやり過ごすために自分のせいにする子たちが多いんです。自分があれをしてしまったから、あれをしなかったから、だからこんなことになっちゃった。自分がいけないんだ、自分が変わらなきゃと思ってる子が多いです。だからこそ、あの子たちが自分をダメだと思った瞬間に、どんな声をかけるか、それが大事だと思っています。』 

『子どもたちは助けてってなかなか言いません。あの子たちの助けては最後通告です。手術をしたばかりの子にナースコールを押していいんだって言ったら、その子なんて言ったと思います?「先生、私ね、みんなに迷惑かけてるからこのぐらいの痛み、我慢しなきゃいけないの」って言ったんです。そんな訳ないのに。でも子どもたちはそれをやります。そういうことをする存在なんだとわかって、私たちは関わる必要があるんだと思います。』 

※詳細は「心臓をまもる」2024年2月号に掲載されています。バックナンバー(1冊500円、送料別)のお問合せは本部事務局(mail@heart-mamoru.jp)まで。

★第60回全国大会 2022/10/30

60回目となる今大会では、聖路加国際病院心血管センター特別顧問の丹羽公一郎先生による記念講演や、心臓病児者と家族の生涯を通じた課題について、慶應義塾大学病院小児科 山岸敬幸 先生と岡山大学病院成人先天性心疾患センター長 赤木禎治 先生、患者家族・患者本人によるシンポジウムを行い、未来を担う次世代へのメッセージを発信しています。

〇心臓病者友の会(心友会)

心臓病者友の会(心友会)は全国心臓病の子どもを守る会(以下、守る会)の内部にある、心臓機能障害者本人のための団体です。本人達が交流や会活動を通して、より質の高い生活をめざし、特定の病院や地域を越えて活動しています。質の高い生活とは、心臓機能障害を抱えているとしても物質的・精神的に充実した日々を送り、豊かな人生を歩んでいくことと考えています。

心友会では年に一度、全国の仲間が交流する「全国交流会」を開催しています。2023年はハイブリッドで開催した模様をPVでご覧いただけます。

〇「心臓をまもる」会報の発行

会員の体験談を中心に、医療講座や福祉制度の動きなど、タイムリーな情報を毎月お届けしています。毎月の掲載内容はホームページからご覧いただけます。

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■ 寄付金の使途

初回目標:900,000円
 ・印刷費用800,000円(100ページ、白黒、2,500冊予定)
 ・諸費用100,000円(手数料、冊子郵送にかかる費用)

心臓病児者と家族が幸せに生きることができる社会の実現のために、90万円のゴールに向けてチャレンジしていきます。どうか皆様の温かいご支援をお願いいたします。

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