大谷編集長 ~ファクトチェックへの想い~
2023/8/31 19:48
リトマス編集長の大谷です。
私が東日本大震災をきっかけに検証活動に関わるようになってから12年、リトマスという新メディアを立ち上げてから2年近く(前身の「情報検証JP」含む)。大手報道機関に属したり特別な訓練を積んだりした経験もない一般の市民有志による独立メディアが、ついに国際的に認められ認証を獲得するまでになりました。
2011年の震災当時、地震・津波・原子力事故が重なったあの未曽有の危機で、この国は被災地の外をも含めた大きな混乱に陥りました。インターネットには根拠不明の噂が飛び交い、政府やマスコミも信用が揺らぎました。あふれる情報の何を信じたらいいか分からないというのは、当時を生きた多くの人が共通して抱いていた気持ちでしょう。
幸いにして私自身は直接被災することはありませんでしたが、情報空間の大きな混乱を目の当たりにし、少しでも被災地内外の人々の役に立つことができればと、Twitter(現X)で今の原点となる情報整理や検証の活動を始めたのでした。
当時は「ファクトチェック」という言葉もまだ存在せず、同じようなことをやっている人も少なかったので、とにかく手探りのやり方でした。それが今では同じ志のメンバーが集い、多くの人に納得してもらえるような検証を行うための手法もある程度確立されてきました。今以上の成長を、これからも続けていかなければいけないと思っています。
2011年のあの日以降も、私たちは数多くの災害を経験し、また災害以外でも、不確かな情報が社会に与える悪影響を何度も目にしてきました。大きな災害や事件が起こるたびに、「次への備え」や「再発防止」の必要性が叫ばれ、色々な対策が整備されます。しかし、これまで何度も誤情報による混乱を経験してきた私たちは、将来その被害を防ぐための備えをはたしてできているでしょうか。
現れた誤情報に1つ1つ対処していくのはもちろん大事ですが、その場限りの訂正をするだけでは、忘れた頃にまた同じ話が拡散されてしまうかもしれません。ファクトチェック記事という後に残る形で、筋道の立った説明をしっかりおこなっておけば、同じ話は簡単には広がりにくくなるはずです。そのためには、反論の余地が残るような納得のいかない説明や、特定の意見を押し付け政治的・思想的意図を感じさせる記事では役に立ちません。論理的で、不足が無く、公正なファクトチェックが必要です。
今回私たちリトマスが獲得したIFCNの認証は、この団体が質の高いファクトチェック記事を継続して出し続けていることの証です。「質の高い」というのは、書いてあることが正しいかというのはもちろん、特定の主義主張に味方したり検証の対象が偏ったりしていないか、出典や情報源が明示され読者が確認できるか、間違いが発覚した時には明確に訂正しているかなど、細かなことまで厳密に審査されます。
さらに、団体の資金源も重要な審査ポイントです。ファクトチェックの公平性を疑わせるような、特定の政治的つながりが背後にあると、認証はされません。
こうした厳しい基準をクリアしようとすると、ファクトチェックは労力は多いのに見返りは少ないという割の合わない作業になりがちです。資金調達に常に苦心しながらも、私たちは一般の市民の皆様から頂く寄付金によってこの活動を続けてきました。より多くのファクトチェック記事を発表し、この活動の意義をたくさんの人たちに届けていくためには、これまで以上の安定した運営基盤が欠かせません。
私たちリトマスは、これまで発表してきた記事の質、そして偏りの無い公平公正な視点に、大きな自信を持っています。寄付をご検討の方には、リトマスがこれまでに書いた多くのファクトチェック記事はもちろん、検証をおこなうにあたってのポリシー、編集のプロセス、メンバー1人1人の経歴などを是非ご覧いただき、リトマスが支援に値するメディアかどうかしっかりと確認していただきたいと思っています。いずれもリトマスのウェブサイトから見ていただくことができます。
間違った情報が広がるのを防ぎ、より健全な社会を作っていくため、皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。
リトマス編集長
大谷友也
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