【ごあいさつ】理事長 市原美穂 「かあさんの家」の役割
2023/5/31 15:06
この家に出会ったことの奇跡
かあさんの家は、一人のおじいちゃんから始まりました。認知症で精神的に不安定で夜も寝ずに騒ぐため、在宅介護していたご家族は、体力の限界とストレスで倒れてしまいました。
その頃ホームホスピス宮崎では、家に帰れなければもう一つの家に住み、そこに在宅医療チームを派遣すればいいと考えて家を探していました。そんなとき、「我が家が条件に合えば、父の家を使ってください。」との申し入れがあり、早速家を見に行きました。
閑静な住宅地の中にある100坪程度の平屋建てで、よく手入れされた庭があり、穏やかな日差しが差し込んでいました。今になって思うとこの家に出会ったことの奇跡を感じます。
民家の持つ力
普通の暮らしが刻まれた民家は、不思議な力を持っていました。住人も家族もスタッフも、馴染みの関係を築き、つながりが保たれて心地よい居場所になっていきました。今、全国に広がる「ホームホスピス」の住まいと環境を考える時の目安となっています。
かあさんの家におじいちゃんが施設から帰ってきて、同じ町内の認知症とがんで自宅では暮らせなくなったおばあちゃんとの「とも暮らし」が始まりました。せいぜい1軒に5名くらいの人数ですから、それぞれの生活のリズムを大切にその人に合わせるケアで、生きる力を取り戻していきました。そして20ケ月後、おじいちゃんはひ孫の賑やかな声を聴きながら、人間の営みの一部としての「死」を穏やかに受け入れて旅立たれました。
多様な共生社会にこそ役割がある
かあさんの家は6月で19年目を迎えます。おじいちゃんから始まってこれまでに150名の方々が旅立たれました。自分の持っている”いのち”を精いっぱい生ききって旅立つとき、傍に居る「かあさんの家」は、これからの多様な共生社会にこそ役割を持っていると考えています。そして全国のホームホスピスの原点として常にブラッシュアップしていきたいと思っています。
今回のマンスリーサポーター50人プロジェクトに、是非皆様のご支援をいただきますようよろしくお願いいたします。
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