ねこのしあわせに向き合う(後編) 〜アガットが与えてくれた保護猫活動の価値〜
2022/2/25 12:17
前回の記事はこちら→「ねこのしあわせに向き合う(前編)」
そんな日々の中、少しずつ新しいネコが入所してきました。入所2号は子ネコ、そして3号は1歳の人なれした雄ネコ「ムサシ」でした。ムサシは野良ネコだったとは信じられないくらいフレンドリーで、1歳とは思えないほど体格も大きく落ち着いたネコでした。
アガットのケージがある部屋の外でムサシは暮らすようになりました。ある日ムサシと遊びながらふとアガットを見ると、ガラス越しに私たちを見ていました。よく観察すると、アガットはムサシを見てはケージに体を擦り付けています。試しにムサシと一緒にアガットの部屋に入ってみて、アガットのケージの前でムサシと遊んでみました。アガットはムサシが気になって私に威嚇することも忘れ、人間と遊ぶムサシのことをジーッと見つめています。
それからは毎日ムサシと一緒にアガットのケージの前で過ごすようになりました。アガットもその時間を待っているようでした。ケージの扉を開けると、アガットはケージから出て、恐る恐る近づいてくるようになり、そして2週間もした頃には、私に頭を撫でさせるくらい心を開いてくれました。
あれから1年半、アガットはフレンドリーになり多くの他のネコと過ごし、お客様の前でも落ち着いていることができるようになりました。それでも、ネコらしい気位の高さは残っていて、私たちは親しみを込めて「アガット女王様」と呼んでいたほどです。他のネコと遊んだり一緒に寝たりすることはありませんでしたが、ムサシだけは別でした。いつもムサシの後をついて歩き、グルーミングをし、一緒に眠りました。幸せそうでした。1年半、彼女のムサシに対する態度は一度も変わることはありませんでした。
そしてついに、アガットを家族に迎えたいと言ってくださる方が現れたのです。大好きなムサシと一緒に。
「アガット、よかったね」
私たちは里親さんの優しいお心遣いに歓喜しました。
今、アガットは立派な家ネコとしてムサシと幸せに暮らしています。里親さんから送られてくる写真の中のアガットは、おもちゃで無邪気に遊び、かわらずムサシが大好きで、毎日痴話げんかのような取っ組み合いを繰り広げているようです。一生大好きなムサシと安心して過ごせる幸せに彼女の心が躍っているようでした。保護したことは間違っていなかったと確信させてくれたアガットには、心の底から感謝しています。
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