応援メッセージ 葛西リサさん
2022/2/12 15:15
私は過去20年にわたり、母子世帯の住宅事情について研究をしてきました。
残念ながら、日本では、住宅政策研究はマイナーな領域に留め置かれており、多様化する人々の住宅ニーズについて充分な検証が行われてきていないのが現状です。
そのためか、専門領域が異なる私が「セクシュアリティを理由に安心安全の住まいが確保できない」という告発を受ける機会が少なからずありました。
こういった声に触発され、性的少数者の住宅問題を解明しようと、2020年にアンケート調査を実施しました。自由記述欄には、目を覆いたくなるような、性的少数者への差別の実態がせつせつと書き連ねられていました。
支払い能力に問題がないにもかかわらず、仲介の現場で貸し渋りにあった事例は驚くほど多く、パートナーと入居する住宅を探している際、仲介業者からその事実を親に連絡されたという信じがたい証言もありました。また、最終的な契約段階で、公的書類を提示した際、容姿と不一致があったためか、入居を断られたという体験を書いてくださった方もおられました。
性的少数者の住宅問題は、仲介の現場に限った事ではないことも当事者の声から学びました。経済的に困窮し、居所をなくして福祉施設に入所する場合においても、男女というカテゴリーで区分けされる生活空間に当然のことながら嫌悪を抱く当事者もいること。2012年に同居親族要件を撤廃した公営住宅についても、未だ多くの自治体が、条例等で制限を設け入居者を選別している事実。不利な住環境を打破しようと持家を購入するも、その資産が確実にパートナーにわたるか、相続の課題が立ちはだかる現状。そして、被災者となった場合、パートナーと正当な住宅支援が得られるかの不安。
住まいは人権、住まうことは生きることそのものです。
俯瞰してみれば、日本は少子高齢、人口減少社会の只中にあってケアを取り巻く課題が噴出しています。更に、住宅市場の側も、空き家の増大などを理由に急速な冷え込みを見せています。これまで標準と見なされてきた世帯のみを対象とした住まい方、制度の仕組みは近い将来確実に破綻することでしょう。現状を見る限り、性的少数者に関わらず、非血縁による助け合いが可能な住まいへのシフトは必須なのです。
今回、開設されるシェアハウスは、血縁、異性婚を重んじる不自由な住宅市場のルールに一石を投じる重要な事例であることは間違いがありません。
「誰と住むかは私が決める」ことができる社会に向けて。是非、皆様のお力添えをよろしくお願いします。
追手門学院大学 地域創造学部 葛西リサ
← 活動報告一覧へ戻る