7歳頃から通ってくれているLちゃんも今年19歳になりました。幼い頃から、言葉は言えるのですが、それが疎通性に繋げられなくて、たとえば自閉症スペクトラムの子どもたちがなんでも上手におうむ返しで大人が言うことを再現できるのともまた違って、いつ言葉が出てくるかわからないけど、たまに大いに出てくる、というそんな発語の持ち主でした。知的障がいとしてはとても重いのですが、音楽が大好き、特にクリスマスソングは大大大好き。

　なのに、クリスマス直前の土曜日のセッションでは、朝、ギリギリに起きて来たのでりんごしか食べてなかったからか、スレンダーなのに食べるの大好きな彼女としてはなんか物足りないし、眠いし、で目をこすりながらの入室でした。そこで、まずは「ねむいー？」と歌ってみたら、目をこすりながら笑ってくれました。

　Lちゃんとのセッションは、いつもとてもエキサイティングで、乗ってくると立ち上がって声を出して踊ってくれるのですが、今日はなかなかそこまでは行かない様子だったので、♪12月の雨 とか演奏しながらゆったりまったり、眠い彼女に寄り添ったのでした。

　ところが、いよいよ帰る頃になって、もともと彼女の好きな♪赤鼻のトナカイとか♪サンタが町にやってくる とか♪きよしこのよる のメドレーがないことに気づき出したLちゃん、なんと、くまのプーさんがサンタクロースの衣装を着ているぬいぐるみと、ドラえもんがサンタクロースの仮装をしているぬいぐるみの２つをしっかり抱き抱えてスピーカーの前に立っているではありませんか！

　そう。彼女は、音楽室にたくさんあるぬいぐるみや楽器、小道具を、場面場面で持ち替えては、私たちに何を演奏して欲しいのかを教えてくれることがよくあるのです。

　他にも、歌詞が合っててメロディが違ったり、メロディが合ってて歌詞が違ったりする歌を歌ってリクエストしてくれる時もあります。そして、何よりも彼女は、大人になるにつれ、年々おしゃべりになっているんです！

　最近では、月に２、3回行っている成人利用者のための日中ショートステイ先にお迎えのボランティアもしているのですが、帰り道ずっと、一人で歌っていてくれることもあります。私の顔を見てずっと歌っている、というのも嬉しいですが、「寒いよー」とか「帰ろう」とか「おうちに着いたよー」などの言葉にメロディをつけて歌いかけてあげると、その通り言葉だけ合いの手みたいに返してきてくれるいこともあって、掛け合いになって、そんなことを報告すると、家でもやってるみたいで、Lちゃんのお母さんは「ミュージカルみたいですよね！」と楽しそうにおっしゃいます。

　セッションの前の日にお迎えがあると、エピソードにつながりがあるので、たとえば「今日は一人でボーリングの球を投げることができたんですよ！」という支援員さんの報告や、帰りに「みんなでたのしもう」と言葉で歌っていた、とか、そういうのを使って歌にしてあげることができます。

　Lちゃんの毎日に音楽がずっと、ありますように！

※♪ねむい？ の歌を音声でお聞きいただけます。Lちゃんの声は少しハスキーで低音ボイスです。鼻を鳴らすのは、一緒に歌おうとしてブレスしてくれている時に出る音ではないかと理解しています。聞いてくださる方は、どうぞ暖かい優しい気持ちで！フロアの2名のセラピストが、彼女の表情や声を代弁する意味で笑ったり話したりしてくれていいます。3人で女子会みたいで楽しそうです。

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