「多久には、何もなかろ?」
佐賀県多久市に移住してきたばかりの頃、私はまちの人から何度もこの言葉を掛けられました。かつて炭鉱で栄えたこの町は、閉山とともに活気を失い、いつしか住民自らが「何もない場所」だと自嘲するようになっていたのかもしれません。
けれど、私の目には違う景色が映っていました。市内のあちこちに残された、色鮮やかな壁画たち。それは2015年に始まった「多久市ウォールアートプロジェクト」の足跡でした。
「このアートが100作品がまちを彩ったとき、まちの景色だけではなく、このまちが本当の意味でリブード(再始動)できるのではないか」
コロナ禍で中断していたプロジェクトをリブードしたい-
「よそ者」で「アートと無縁」な私の提案を、まちの人たちは驚きながらも、一緒に考え、実現に向けて動いてくれました。
あれから4年—
全国各地からアーティストたちが多久に滞在し、今では86作品(※2026年10月現在)がまちを彩っています。アートができるたび、地域の住民が花を植え、飲食店が看板を塗り替え、照明をつけ、子どもたちが「自分も描いてみたい」と目を輝かせる。そんな変化を目の当たりにしてきました。
2027年3月、私たちはついに100作品目の完成を迎えます。この12年の歩みを支えてくださった皆さんと共に祝い、次世代へバトンを渡すための「フィナーレイベント」を開催したい。再びアーティストのみなさんを多久に招き、最高の瞬間を分かち合うための資金として、あと200万円が足りません。
多久というまちが「アートでリブードし、誰もが挑戦できる場所になった」という証を、一緒に刻んでいただくために仲間を募ります。
ストーリー
「何もない町」に降り立った、一人の移住者の視点
こんにちは。一般社団法人たく21の大島仁美です。
私は今、佐賀県多久市で「多久市ウォールアートプロジェクト」を担当しています。
実を言うと、私は多久市出身ではありません。東京で地域創生の仕事をしていた私が、縁あってこのまちに移住してきたのは、ちょうどコロナ禍が始まった頃のことでした。
初めて多久駅に降り立った時の、静かな駅前と閉まったままのシャッター。すれ違う方々に挨拶をすると、温かく迎え入れてくれる一方で、決まって返ってくる言葉がありました。
「こんな何もないとこに、よう来たね」
その言葉に含まれた寂しげな響きに、私はどこか不思議な気持ちになりました。なぜなら、市内を歩くと、商店街の古い壁やシャッターには、数々のアーティストさんの作品で彩られた”唯一無二のまちなみ”があったからです。
それは、2015年に多久市在住の画家・冨永ボンドさんたちが中心となって始めたアートプロジェクトの足跡でした。
しかし、当時は活動が一時休止しており、約30作品あった壁画も、どこか「過去の記憶」になりかけていました。
「これは、もったいない。もっとこの景色が市内を広がれば、このまちはもっと誇れる場所になれるはずだ」
アートの専門家でもない、ただの移住者である私の提案。それが、このプロジェクトが「リブート(再始動)」するきっかけでした。

キッチンから見えるアートが変えた日常
プロジェクトを再開してからの3年半は、驚きの連続でした。私たちが壁を彩られたり、塗り替えられるたび、それ以上に市内の人の「心」が塗り替えられていくのを肌で感じたからです。
ある日、京町商店街に描かれた作品の向かいに住むお母さんが、私にそっと教えてくれました。
「大島さん、あの作品ね、うちのキッチンからちょうどよく見えるのよ。家事をしている時にふと目をやると、なんだか元気がもらえるの。時々ね、あの絵は私のために描かれたんじゃないかって思うことがあるのよ」
その言葉を聞いた時、私は震えるほど感動しました。壁画、パブリックアートは、美術館での展示とは違います。365日、24時間、そこに住む人の日常に溶け込むものです。誰か一人の孤独を癒やし、誰か一人の家事の時間を彩る。そんな「ミクロな救い」が、このプロジェクトによって、確実に生まれていました。
また、ある高齢の男性は、散歩コースを変えたと言います。
「アートができてから、市内が明るくなった気がするんだ。歩くのが楽しくなって、毎日少し遠回りするようになったよ」
これらは、行政の統計データには載らない小さな変化かもしれません。でも、このようなエピソードこそが、多久市が自信を取り戻していくための本当の動力源なのだと私は信じています。

炎天下と雪の中で、壁と向き合い続けたアーティストたち
このプロジェクトは、全国から集まってくれるアーティストたちの仕事なくして語れません。彼らは平均して5日から10日間、多久市内に滞在します。
彼らの制作環境は、決して楽なものではありません。夏は炎天下、冬は筆を持つ手が凍えるような雪の日。それでも彼らは、一筆一筆、魂を込めて壁とその場所に向き合い続けます。その姿を、日々住民のみなさんの目にも焼き付いています。
最初は「何をやっているんだ?」と遠巻きに見ていた住民たちが、次第に差し入れを持ってきてくれるようになり、作業が終わる頃には「何かほしいものはないか?」「次はいつ来るんだ?」と家族や親せきのような交流が生まれます。
アーティストたちは口を揃えて言います。
「多久の人は、本当に温かい。こんなに歓迎されるまちは他にない」と。
彼らが多久に残してくれるのは、作品だけではありません。「自分のすむまちのために、これほど一生懸命になってくれる人がいる」という、住民への気づきです。 アーティストたちが汗を流す姿を見て、住民たちが自発的に作品の周りに花を植え始めたり、自分の店の看板を改修したり、照明を自費で取り付けてくださったりするようになりました。アートの力によって、眠っていたまちの自尊心を呼び覚ましたのではないかー私はそう思っています。

100作品。それは、景色がどう変わるかを見るための「約束」
現在、多久市内のウォールアートは86作品まで増えました。そして私たちは、2027年3月までに、節目の「100作品」を完成させることを目標に掲げています。
なぜ、100なのか。
正直に言えば、キリが良いから、というだけかもしれません。でも、100枚の作品がこのまちに生まれたとき、景色・まちがどう変わるのかを、私は見てみたいんです。1枚の作品でお母さんのキッチンを明るくしたように、100枚の作品が、多久の全体の空気を変えてくれるんじゃないか。そんなを挑戦を皆さんと一緒に完結させたいのです。
「よそ者」の私が、何の縁もない町で「もう一度プロジェクトをやりたい」と言い出した時、まちの人たちは私を誰一人として拒絶しませんでした。それどころか、多くの方々が「やってみんしゃい!応援・加勢すっぞ」と背中を押してくれました。
一貫して想いを持ち続ければ、多久は応援してくれる。
そのことを、私は身をもって知りました。だからこそ、100作品の完成記念イベントは、私にとって、そして多久市にとっても、新しい時代の幕開けを告げる「約束」の儀式であり、「100作品の完成がゴールではなく、新たなスタート」なのです。

あと200万円。アーティストに「出会い」をプレゼントするために
今回のクラウドファンディングで募る200万円は、2027年3月に開催する多久市ウォールアートプロジェクト100作品記念イベント「TAKU Wall Art 100+」の運営資金の一部として使わせていただきます。
イベントの全体予算は1,550万円。大規模な官民連携プロジェクトとして、文化庁の補助金や地元企業からの多大な協賛金も活用します。その中で、なぜあえてこのクラウドファンディングが必要なのか。
それは、アーティストを多久に招くための費用だけは、どうしても「誰かの顔が見えるお金」で届けたいからです。
補助金や企業協賛は、会場の設営や警備など、どうしても「硬い」部分に使われることが多いのが現状です。
しかし、このプロジェクトの根幹には、『アーティストと住民の交流』にあります。
「TAKU×ART×FUN」
官民連携し約12年にも渡り展開してきた『アートのまち、多久』のスローガンを多久市でアーティストとともに、「アートでより楽しく」楽しんでいただくための企画を多数ご用意しております。
その「出会い」そのものを、応援してくださる皆さんと一緒にプレゼントしたい。
「自分たちの寄付で、あのアーティストがまた多久に来てくれた」
「アートの力で小さなまちでも変われるチャンスがあると証明できる」
そう思っていただけることで、イベントは単なる「見せ物」ではなく、皆さんと一緒に作り上げた「みんなの祝祭」になれると確信しています。
子どもたちに見せたい、「挑戦が肯定される」まちの新しい姿
今回のイベントでは、これまで関わってくれたアーティストたちと共に、100作品目の完成を祝い、多くの方にアートをより身近に関していただけるアートイベント企画など特別な1日を計画しています。会場全体がアートの熱気に包まれる。そんな光景を、私は多久の子どもたちに見せてあげたいのです。
通学路にあるアートを見上げて、「自分も何かを表現してみたい」と感じる子どもたち。
「多久には何もない」と思って育つのではなく、「自分の住むまちには、世界中から表現者が集まる場所なんだ」「よそ者でも、アートでも、ここでは挑戦できるんだ」。そんな誇りを、彼らの心に種まきしたい。
100作品が完成した後も、私たちの歩みは止まりません。空き家をアーティストの滞在拠点に改修したり、若手を育成したりと、アートを軸にした新しい循環を作っていく。今回は、あくまでそのための大きなスタート地点でもあります。
あなたも、100作品の物語の「目撃者」になりませんか
最後になりますが、私には一つの願いがあります。
アートは、なくても生きていけるものかもしれません。
でも、アートがあることで、会話が生まれ、散歩が楽しくなり、まちなみの景色が明るくなる。そんな「心の豊かさ」が、これからの地方には必要だと信じています。
今回のクラウドファンディングは、単なる寄付の募集ではありません。「多久が、アートで変わっていく物語」の仲間になっていただくための招待状です。
「多久は、何もなかろ?」と笑っていたおじいちゃんが、100作品目の絵を見て、ふふっと鼻で笑いながらも、どこか嬉しそうにしている。そんな風景を想像しています。何もないと思っていた場所に、実はこんなに彩りや豊かな景色が溢れていた。その発見を、皆さんと分かち合えたら、これほど幸せなことはありません。
どうか、私たちの節目を、そして新しい始まりを、一緒に完成させてください。
温かいご支援を、心よりお願い申し上げます。
一般社団法人たく21
多久市ウォールアートプロジェクト 大島 仁美

***イベント開催概要***
多久市ウォールアートプロジェクト100作品完成記念イベント『TAKU Wall Art 100+』(タク ウォールアート ヒャク プラス)
開催日時:令和9年3月13日(土) 午前11時から午後5時まで ※小雨決行、荒天中止
主催:多久市/共催:(一社)たく21、多久市ウォールアートプロジェクト実行委員会
協力:(一社)多久市観光協会、多久市商工会
後援:株式会社多久ケーブルメディア、佐賀新聞社、サガテレビ、エフエム佐賀、NBC ラジオ佐賀、ぶんぶんテレビ
開催場所:JR唐津線多久駅、多久市まちづくり交流センター「あいぱれっと」周辺
主な内容
1)ウォールアート100作品完成記念セレモニー
2)100名のアーティストと挑戦!アートイベント企画
3)音楽、DJ、ダンスなどのアートステージパフォーマンス
4)子どもから大人まで楽しめるアートワークショップ
5)マルシェ、キッチンカーなどの飲食・物販ブース
6)協賛企業によるブース出展 ※内容は、今後の調整により変更となる場合があります。

「TAKU Wall Art 100+」アーティストおよび学生たちがイベントでパフォーマンス企画による運営費
1,000円
イベント開催にあたり、ベストな状態で挑んでいただくために、アーティストおよび学生たちが必要となる費用への応援をお願いいたします。

こどもたちが主役!「TAKU Wall Art 100+」アートに触れる・感じる!アートワークショップ運営費
1,000円
佐賀県内外の学校や教育機関、企業のみなさんにご協力いただき、こどもたちが楽しめるワークショップを企画しております。事業者さんへのワークショップにかかる材料費や交通費、必要な備品購入費などを運営にかかる費用に関するご支援をお願いいたします。

とにかく応援すっけ!多久を盛り上げてくんしゃい!「TAKU Wall Art 100+」使い道お任せコース
500円
多久市ウォールアートプロジェクト100作品完成記念イベント「TAKU Wall Art 100+」を盛り上げるための音楽・装飾・広報物などのイベントにかかる運営費に関して、使い道をプロジェクトに託していただくプラン。ご支援をお願いいたします。


