ストーリー
■ セカンドゴールを目指して
クラウドファンディングをはじめて12日間という短期間で目標額の100万円を達成することができました。金額もさることながら100人以上の方にご支援をいただけたことは何事にも変えられない喜びです。なぜなら私たちが理想とする「学びのバリアフリー」は、多くの方々の参画によって実現すると考えられるからです。
そこで私たちは次のステージに向けて新たなゴールとして支援者を現在の倍の200人という目標を設定し、総額150万円のご寄付をお願いすることといたしました。目標を支援者数とした理由は、住民のトラスト運動によって誕生した資料館の原点に立ち返るためです。
■石見銀山資料館の原点とは?
石見銀山資料館の建物は1902年(明治35)築の旧邇摩郡役所で、再来年には120年を迎えます。皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)の山陰行啓時には御便殿として利用された由緒ある文化財でもあります。郡制の廃止後は、土木事務所や裁縫女学校、中学校、保育園などと変遷を辿りましたが、1976年ついに老朽化を理由に取壊し計画が浮上したのです。
地元では貴重な文化遺産であり、町のランドマークでもある旧郡役所を残そうと保存運動が起こりました。所有者である大田市との協議の末に取壊しは中止となり、地元への無償譲渡が決まったのでした。翌年には住民の有志が資金を出し合って、石見銀山の歴史文化の紹介と、関連資料の保存を目的とした石見銀山資料館が誕生しました。多くの歴史的建造物が開発の下に取り壊されていく時代にあって、この取り組みは住民の主体的な保存運動の先進的な事例として高く評価されています。
いつしか文化財保護は行政の役割との認識が当たり前となりました。しかし、歴史文化を築いてきたのは地域の人々であり、またそれを守り伝えるのも住民ではないでしょうか。石見銀山資料館の運営支援を目的としてはじめたクラウドファンディングですが、この動きを未来に向けた新たな保存運動へと発展させていきたいと考えています。引き続き、ご支援いただきますようお願いいたします。
町の博物館の役割について館長のインタビュー記事
https://greenz.jp/2019/02/26/iwamiginzan_siryokan/
■クラウドファンディングのきっかけ
住民のトラスト運動で誕生した世界遺産の町の小さな資料館。新型コロナウイルス感染防止の自粛により休館で収入はほぼゼロ。予定していた展覧会や講座・講演会なども延期・中止となり、開館以来最大の運営危機。半世紀にわたり石見銀山遺跡の保存とその魅力を発信してきた資料館。誰もが世界遺産や石見銀山の学びを享受できる環境を実現するため日々奮闘しています。この活動の火を消さないためにも運営に対するご支援をよろしくお願いします。
■ 住民の文化力の結晶
石見銀山資料館のある島根県大田市大森町は、かつて日本有数の銀山として栄えた町です。この町は自然と遺跡、そして人々の暮らしが調和している点が評価され2007年、「石見銀山遺跡とその文化的景観」という名称で世界遺産に登録されました。
私たち石見銀山資料館は、世界遺産の中にある唯一の博物館で、住民による旧邇摩郡役所(1902年築)という歴史的建造物の保存運動の成果として1976年に誕生しました。以来半世紀にわたってこの町のアイデンティティーである石見銀山の保存と魅力を発信し続けています。
石見銀山資料館紹介動画
■ 開館以来最大の危機に直面
突然訪れた新型コロナウイルスの感染脅威。わずかに人口400人、とりわけ高齢者の多いこの町にあっては、来訪者から持ち込まれるウイルスによる感染の恐怖はとても大きく、また感染規模次第ではコミュニティーの存亡すら危ぶまれる事態も想定されます。このような状況を考慮して、私たちもコミュニティーの一員として住民の皆様の安全を守る観点から国の緊急事態宣言を前倒しし、4月11日から5月31日までの50日間を休館することといたしました。
石見銀山資料館は、設立当初から行政からの補助金や助成金はなく、入館料とわずかな物販収入を資金として運営を行なってきました。当然ながら、休館中は無収入に等しい状態です。しかも1年間で最も入館者の多いゴールデンウイークを休館するとなると、その損失は甚大です。加えて、職員の人件費、水道光熱費、OA機器のリース料など毎月の固定費の支払いが重くのしかかってきます。
■ 「学びのバリアフリー」の実現を目指す!
コロナ禍は、これまで私たちが経験したことのないほどの恐怖と不安を社会にもたらしています。感染をめぐる差別と貧困、そして分断。長年にわたって築いてきた人間・社会・国際などの諸関係がいとも簡単に崩れようとしています。求められる「新しい生活様式」や価値観の転換。不透明な未来に私たちはどのように立ち向かって行けばよいのでしょう。
2019年、当館の所在地大森町において「持続可能な社会」をテーマとするユネスコのシンポジウムが開催されました。人口400人の町が「持続可能な社会」のモデルになり得るかどうか、というものです。議論の結果は別として、この大森町の歴史や現在の暮らしに、未来を示唆する何かがあるのではないかと考えています。
私たち資料館では、この大森(石見銀山)の歴史や経験を優れた教材だと考えています。と当時に、世界遺産についても平和や人権、自然環境、生物多様性などを考えるための教科書である、とも捉えています。そこで当館では博物館の社会的使命として「教育の機会均等」の実現に向け「学びのバリアフリー」を提唱しています。これは国・地域・人種・民族・国籍・性別・障がいの有無に関係なく誰もが石見銀山での学びを享受できる環境を整備することです。そして、ここでの「学び」を通して、平和・人権・環境などの社会的課題の解決に向けた人材の育成を目指しています。
資料館・小学校・高校・福祉課とのコラボで製作したバリアフリー動画
■ ご支援をお願いする金額と期間
本キャンペーンでは、100万円を目標として皆様からのご寄付をお願いし、頂いた寄付金は館の運営資金の一部に充てさせていただきます。目標金額の100万円は昨年度のゴールデンウイーク期間中の入館者数(1900人)を基準に入館料(550円)をかけて積算したものです。本来コロナ自粛がなければ得られた収入であり、この部分について広く皆様からのご支援をいただければ幸いと存じます。
寄付金の募集期間は6月1日(月)から7月12日(日)までの42日間とし、Syncableのキャンペンページのほか当館のホームページ、Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSを利用し、私たちの理念やこれまでの活動実績、日常の業務、世界遺産石見銀山遺跡の魅力などの情報を随時ご報告させていただきます。寄付してよかったと思っていただけるように取り組んで参ります。
■ 代表者のメッセージ
特定非営利活動法人石見銀山資料館理事長の仲野義文です。また、石見銀山資料館の館長でもあり、学芸員の時代から数えて四半世紀以上この資料館に勤めています。
私はここで働くことをとても誇りにしています。それはこの資料館が行政ではなく住民の力で作り上げ、他からの支援もなく50年もの長きにわたって活動を続けてきたからです。しかも、一昨年にNPO法人になるまでは任意団体でありながら、学芸員を配置し、調査研究や資料の保存、教育普及活動もきちんとこなしてきました。このような形態の博物館が全国にあるでしょうか?
ところで、私や理事、職員は「学び」が未来を創り出す原動力だと考えています。「学び」という行為はもちろんですが、何を学ぶかが大切であり、その教材として私たちには石見銀山があります。職員わずか2名の小さな資料館ですが、このような高い志をもった博物館はないと自負しています。
私たちは館を閉じるわけにはいきません。なぜなら、ここでの「学び」が「持続可能な社会」への答えがあると信じているからです。その機会を提供する役割が石見銀山資料館にあるのです。どうぞ私たちの活動の趣旨をご理解いただき、ご支援賜りますようお願いいたします。
石見銀山資料館HP
■ 寄付金の用途
寄付金については全額、人件費、光熱費、OA機器のリース料などの固定費に充てさせていただきます。特に人件費は職員の雇用の維持にとって重要であり、このことが資料館の活動を持続可能なものとし、もって世界遺産石見銀山遺跡の保全や私たちが目指す「学びのバリアフリー」の実現につながるものと確信しています。