事業の目的
SEEDきょうと発足当初より継続して行っている、組織の基盤を形作った活動です。摂食障害は家族にかかる負担が非常に大きく、家族のケアスキルの水準は、当事者の回復を大きく左右します。きょうと摂食障害家族教室では、当事者に最も長く、深く関わる家族をエンパワメントし、疾患を正しく理解して効果的なサポートを行えるように、家族への心理教育と交流会を行っています。家族教室は1期あたり5回シリーズで、半年を1期とし、半年毎に参加者を事前に募集して実施しています。
これまでの活動
【概要】
• 対象:以前は、摂食障害の治療のため定期的に通院している患者の家族で、教室への参加希望があり、主治医より家族教室への参加にあたって意見書を送付頂いた方としておりましたが、より参加できるご家族の幅を広げるため、令和元年度の後期からは、ご本人が通院していないご家族でも家族教室に参加できるよう条件を変更しました。)
• 日時:原則毎月第3土曜日の13:30~16:00
• 1期の参加者は約20名程度
• 参加費は1期8,000円
• 「モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア」に基づいたプログラムを行っています。
【プログラム内容】
• 前半にSEEDきょうとスタッフによる疾患心理教育が60分:「摂食障害とは」「摂食障害とからだ」「摂食障害と家族との関係」「コミュニケーションスキルと対人関係」「摂食障害の問題行動に取り組む」
「摂食障害とは」というテーマで病気概要を理解し、「摂食障害とからだ」というテーマで身体症状について詳しく学びます。「摂食障害と家族の関係」、「コミュニケーションスキルと対人関係」というテーマでは家族関係を客観的にとらえた上で、実際にはどのようにコミュニケーションを行ったらよいのかを考えます。「摂食障害の問題行動に取り組む」では、より具体的に症状への対応法について学びます。
• 後半に家族同士の交流会を60分:当事者の年代もしくは症状別にグループ分けを行い、1グループ6名程度とし、スタッフ1名がファシリテーターとして参加。参加家族は小グループに分かれた後、講義をふまえて家族自身の体験を話し合い、当事者のケアにおいて上手くいった経験、失敗した経験を共有します。多くの家族は摂食障害についてこのようにオープンに話し合える環境がなく、孤立して悩み続けています。交流会は講義にも増して、家族にとっての貴重な場となっています。
これまでの事業成果
【らくの会(家族会)】
らくの会は「きょうと摂食障害家族教室」を卒業した摂食障害者の家族による家族会です。平成24年4月に発足し、当初はSEEDきょうと組織の一部でしたが、平成26年4月からは独立した組織となりました。摂食障害は慢性的に経過することが多いため、家族の負担は大きいものです。らくの会では、家族教室の交流会と同様、ご家族同士が交流し、当事者の症状や効果的なケアの方法など、他では話す機会がないことを話し合うことができます。この他にも、より実践的なケア技術の習得を図る勉強会も行ったり、摂食障害について深い知識を持つ関係者を招いて、講演会を企画したりしています。家族自身の不安を和らげることができると、当事者に対してもより良い支援を続けていくことができます。
入会に当たっては、SEEDきょうとが実施している前述の「きょうと摂食障害家族教室」を修了していることが条件となっています。家族会を安定して運営していくためには、摂食障害についての理解や対応の仕方について、一定の共有認識が必要と考えています。そのため、家族教室の修了を入会条件として定めています。
令和2年度3月末時点の会員数は38名となり、多くのご家族が加入されています。当事者の母親が中心ですが、父親が入会されることも多くなっています。月に1回の頻度で、プティパにて交流会を行っています。また適宜、らくの会の運営について話し合う定例会議も実施されています。SEEDきょうとの家族会担当スタッフの補助と、らくの会の世話人の方が中心となって運営しており、年度ごとに家族会の会員の中から、代表・会計・書記等の世話人を選出し、協力して会の運営事務を行っています。
平成26年度からは、定例会議、交流会と別に、家族だけの茶話会企画なども始まり、平成28年度には外部より摂食障害の専門家の講師を招いて、より高度な支援方法の勉強会や講演会を行いました。
平成30年度は7月に『家族関係について』をテーマに、龍谷大学教授で臨床心理士の東豊先生(龍谷大学)による勉強会、12月には『回復のストーリー』をテーマに、いづさん・こはるさん(あかりプロジェクト)による勉強会を開催しました。
令和元年度は、7月に『摂食障害からの回復について考える』をテーマに、摂食障害から回復された方のご家族と、安東医院の臨床心理士である工藤悠世先生にお越しいただき、家族として接してこられた体験や臨床心理士としてその親子を支えてこられたお話を、対談形式でお伺いしました。年明けの令和2年1月には初めてらくの会とプティパのコラボ企画が実現しました。文化人類学者の磯野真穂先生にお越しいただき、『らくの会・プティパ コラボ勉強会 ~からだのシューレin京都~』と題して、「承認欲求」、「親子」をメインテーマに、文化人類学の考え方にふれながら、「ふつうに食べるってなんだろう?」、「なんでこんなに認められたいんだろう?」ということについて、みんなで自由に考えを語り合いました。
令和2年度は、コロナウィルスの影響により、4月~8月までは休会となりましたが、9月には広めの会場を借り、半年ぶりに交流会を再開しました。現地参加のみではなく、オンラインミーティングツールを用いて参加される方もおり、試行錯誤しながらの運営となりました。開催時間も普段より短く設定し、十分に話をすることができない環境ではありましたが、お互いの顔を見て安堵する方も多く、あらためて繋がりの大切さを感じる1年となりました。年明けの1月、2月は緊急事態宣言もあり、再び休会となりましたが、3月には会を再開しました。定期的に交流会を開催することが難しい状況が続いておりますが、会を維持しつづけ繋がりを保つことを大切にしながら、今後も活動を続けていきたいと思います。
事業の必要経費
講義を実施するための講師料や、会場のレンタル料、交流会をファシリテートするスタッフの人件費等が必要です。